[No.190-2]恋は経験
No.190-2
確かに佳織(かおり)の言う通りだ。
思うことと、実行することは違う。
私の場合は、もっと酷いのかもしれない。
「そうね・・・私なんか“思う”よりも、“思ってる”って感じ」
「強い意志で“思う”んじゃなくて、軽く“思ってる”ってだけ」
もともとは佳織のため息から始まった話だった。
それがいつしか、私がペラペラしゃべりだした。
「ご、ごめん・・・私のことばかり」
「いいよ、私も同じだから」
似た者同士だからこそ、悩みも打ち明けられるのかもしれない。
お互いがお互いの気持ちを代弁する。
「・・・で、話を戻していい?」
「あぁ、そうね・・・私のため息ね」
佳織の話は結局、恋人に最近振られた話だった。
「なんだ、よくある話じゃない」
急に肩の荷が降りたような気分だった。
「でも、ちょっと待って・・・」
佳織が急に真剣な表情になった。
何か重要なことに気付いたような、そんな感じに見える。
「何か悟ったの?」
あえて高貴な表現を使った。
「うん、悟った」
「何を?」
「私達、振られてばかりいるってことよね?」
役に立たない経験は、人以上にしてるのかもしれない。
(No.190完)
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