[No.190-1]恋は経験
No.190-1
「ふぅぅ・・・」
「珍しいわね、ため息付くなんて」
佳織(かおり)にいつもの覇気が見えない。
何事にも前向きで、ため息のイメージには程遠い。
「仕事?恋愛?それとも衣食住?」
「最後の衣食住ってのは何なのよ」
「実際はどっちなの?」
「私が仕事で悩むと思う?」
「それもそうね・・・」
「そこで、納得しないのぉ!」
偉そうだけど、これはこれで私なりの気遣いだ。
一人悩んでも始まらない。
今までも、悩み事は打ち明け合っていた。
「恋愛に経験って役に立たないよね」
とっさには判断できない内容だ。
一般的には経験自体、役に立たないわけではない。
だが、相手は“恋愛”だ。
「そ、そうね・・・どうだろう?」
誰に問い掛けたか分からない曖昧な返事をした。
「でも、次からこんな恋はしない・・・って思うじゃない?」
結局、自分に問い掛けてそれに答えた格好になった。
少なくとも自分はそうしてきた。
辛い恋を経験したら、次はきっと・・・と。
「思うことと、実行することは違うよ」
佳織の言ったことは、私にも当てはまる。
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