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[No.189-2]小さな勇気

No.189-2

次の日、ケータイにメールが届いた。

それまでは社内メールだった。
お互いケータイのアドレスを知らなかったからだ。
知らない・・・と言うより、知る必要も教える必要も無かった。

『昨日はありがとう。久しぶりに北海道の話ができたよ』
『確かに!方言丸出しで、なんかスキッリした』

転勤先が関西と言うこともあり、今ではすっかり関西弁だ。
久しぶりに、北海道弁で話した気がする。

このメールが始まりになった。

始まりと言っても、別に恋仲が始まったわけではない。
単にメールのやり取りが始まっただけだ。

それから更に1年後が過ぎた。

「なぁ、メールするきっかけって覚えてる?」

何気なく聞いてみた。
特別な答えを期待することもなく、ただ何となく・・・。

「私が遅れた飲み会の次の日でしょ?」

まさかメールが届くとは考えてもみなかった。
そのことを正直に話した。

「そうね、あえてアドレスを教え合うのも不自然だしね」
「自然な流れ・・・だったんじゃない?」

彼女の言葉にためらいを覚えた。
自然な流れとは言い難い所があるからだ。
念のために・・・と教えたのは親切心があったからではない。

「本当は・・・」
「あなたの勇気に応えてみたんだけど、ダメだった?」

だからと言って、ふたりが恋仲に発展はしなかった。
小さな勇気とは、そんな関係を続けられることにある。

(No.189完)

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