[No.189-1]小さな勇気
No.189-1
ことの始まりは今でも鮮明に覚えている。
もしかしたら、僕の小さな勇気だったのかもしれない。
『念のため、メールアドレスと電話番号教えておくよ』
同郷の女子社員と飲みに行く約束をした。
彼女とは、お互いが転勤した後に再び出逢うことになった。
単なる偶然で、運命的なものは感じていない。
それに、もともと仲が良かったわけでもない。
『もしもし・・・ごめん、ちょっと遅れる』
『分かった、あせらずどうぞ』
彼女からの電話だった。
今、電車の中に居るらしい。
実はメールアドレスを教えたのは、こんな時のためだ。
電車の中では電話しにくいだろうから。
(電話か・・・)
もちろん、非通知ではないけど、あることが頭をよぎる。
「アドレス・・・教えたくないのかな・・・」
深く考え過ぎかもしれない。
電話の方が伝達は楽だし、それに誠意も伝わる。
理由はどうであれ、遅刻している。
逆にメールでは失礼だと判断したのかもしれない。
「ごめなさい・・・遅れちゃって・・・」
「そ、そうだなぁ・・・」
「ん?どうしたの・・・?」
遅刻のことより、会社とは違う雰囲気の彼女に驚いた。
良い意味で少し気後れした。
(へぇ・・・別人のようだな)
「まぁ・・・とりあえず、乾杯!」
「うん、それじゃ、再会を祝って乾杯!」
(再会か・・・)
再会してから、約1年後の飲み会開催だった。
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