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2010年8月

[No.195-1]二度目の出逢い

No.195-1

出逢いは必ずしも、人と人とだけとは限らない。

「犬?それともネコかな?」

ふざけているわけではない。
それが彼女の持ち味だからだ。

「そ、そんな時もあるかな・・・」

とりあえず勢いにのまれておこう。
彼女は不思議な魅力を持つブロガーだ。
単なる不思議ちゃんではなく、独特の感性を持っている。

「最近、ブログでお気に入りの言葉を見つけたんだ」
「えー、なになに!」

彼女が興味津々で応えてくれる。
自分の記事のことだ・・・多分、すぐに気付いてくれるだろう。

「ゆってもいい?」
「早くぅ、ゆってよ・・・もしかして」

彼女はすぐに気付いたようだった。

「そう!それだよ」
「なんだ・・・ポクポクだったんだ!」
「それ違うし!」

以前、彼女の記事にコメントしたことがある。
その記事には木魚を叩く音を“ポクポク”と表現していた。
ピッタリな擬音に、コメントを書かずにはいられなかった。

「違うの?」
「うん、それはそれで大好きなんだけど・・・」

(No.195-2へ続く)

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[No.194-2]通り過ぎる人

No.194-2

「・・・何が居るって?」

一言多かったのかもしれない。
美和がその一言にすかさず突っ込んできた。

「他にも特徴的な人が居るんだよ」

赤いメガネがおしゃれな大学生風の女性。
かなりのスピードを出して自転車で疾走している。

「どうせ、“おしゃれメガネちゃん”って呼んでるんでしょ?」
「よく分かったな、でも・・・」
「はいはい、心の中で思ってるだけ、って言いたいんでしょ?」

彼女もまた清清しい朝だと言うのに、真剣な顔だ。
まぁ、あのスピードだ・・・何となく理由も想像できる。

「そうだよ、声掛けるわけないだろ?」

自分で言ってから、ある矛盾に気付いた。
それは美和も同じだったようだ。

「じゃ、私は何て呼ばれてたわけ?」
「それは・・・」

美和の場合はすれ違うのではなく、方向が同じだった。
歩くのが早い彼女は、いつも僕を抜いて行った。

「特に名前なんて付けてないよ」

嘘じゃない。
サラサラの髪が風になびいていたのが印象的だった。

「私は付けてたわよ」
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(No.194完)

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[No.194-1]通り過ぎる人

No.194-1

「怒られるわよ、そんなこと言ったら」

人間観察するつもりがなくても、そうなってしまうことがある。
朝、駅に向かうために歩く10分程度の距離。
この間に多くの顔見知りとすれ違う。

「それって、顔見知りって言わないでしょ?」
「暗黙の了解だよ」
「向こうはいい迷惑よ、きっと」

言葉を交わしたこともなければ、会釈したこともない。
ほぼ毎日、決まった時間にすれ違うだけの人達だ。

「だ・か・らぁ、女子高生にそんなこと言ったら怒られるよ」

美和に通勤途中に出逢う人について話した。
その中に特徴的な人が居るからだ。

「しかめっ面・・・ってダメか?」
「ダメに決まってるでしょ!女性に向かって失礼よ」

別に悪意を持って発言しているつもりはない。
その女子高生とは自転車ですれ違う。
意味もない笑顔もどうかと思うが、明らかにしかめっ面をしている。

「それが逆にかわいく見えるんだよ」
「それはそれで問題発言よ」
「おい、おい・・・そんなんじゃなくて」

彼女に好意を持っているとか、そんなんじゃない。
女子高生としかめっ面の組み合わせが何とも微笑ましい。

「とにかく、自然に通り過ぎるのよ」
「分かってるよ、他にも居るから」

(No.194-2へ続く)

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ホタル通信 No.036

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.129 時間に掛けるもの
実話度:★★★★★(100%)
語り手:男性

冬のホタルに度々、登場して頂いている方とのメールのやり取りの事実を小説化しています。実話度100%のお決まりで、語り手の男性が作者とは限りません。

この話の相手は“メールの文字”であり、私の言葉は口にしたもの、心の中で思ったことを含めて、基本はつぶやきになります。

『時間に何を掛けますか?』

彼女らしい問い掛けでした。
そこから続く計算式も小説の通り「フンフン」とうなづけるものでした。
時間というものは不思議な存在で、それが加わると平面だったものに奥行きを与えて立体化します。
また、“時間×実践=経験”が表しているように、実践と言う一枚の静止画は時間を掛けることにより動画になる。それはやがてひとつの映画になるぐらい積み重ねられていく。もちろん、その映画のタイトルは“経験”です
それに、みずみずしかった果物も、時が来れば朽ち果ててしまう。
時間には誰にも止められない、脅威の力も持っています。

『時間に何を掛けますか?』

この答えは悩みました。
ユーモアのある、気の利いた答えを模索しましたが、フッと気付くものがありました。“大喜利”をやってるんじゃない・・・と

『時間×自分=時間』

数学的な話は小説の通りですが、数学だけでは表せないのが現実です。もし“自分”に色が付いていたら、時間もその色に染まって行くように思えます。
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[No.193-2]石ころ

No.193-2

「田んぼに石ころが落ちたんだ?」

途中で蹴り損ねて、石ころが田んぼに落ちた。
夏だと言うこともあり、田んぼは十分過ぎるほど水で潤っていた。

「拾いに行ったら・・・そうなっちゃって」

泥まみれになるつもりはなかったけど、ぬかるみに足を取られた。

「そこまでして、ルールを守らなくても・・・」

確かにそうだと思う。
誰も見ていないし、ルールの存在だって知らない。

「誰も見てないし、ルールだって・・・」

私と同じことを言った。
他人から見ればバカバカしいことを真剣にやっている。

「自分で決めたことは守りたいだけ」
「頑固と言うか・・・」
「自分でも嫌になるよ」

とにかく、こんなことが良くある。
それに仕事ではこんな性格があだになる場合が多い。
こだわりは、単にわがままとしか見られない。

「そんなことないよ」
「そんなことあるわよ」

泥だらけになった時も母に怒られただけだった。
もちろん、理由なんて話す意味がない。

「でも、石ころを見つけた瞬間が目に浮かぶわよ」

そこから見つけだしたのは、私の信念だったのかもしれない。

(No.193完)

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[No.193-1]石ころ

No.193-1

私の性格は今に始まったことではない。

そんな時、いつも思い出すエピソードがある。

「へぇ~、初耳だね」
「そりゃそうよ!初めて他人に話すからね」

小学生の時、通学路にある田んぼで泥まみれになったことがある。
自分の意志に反してではなく、自分の意志で・・・。

「何か理由があるんだよね?」
「いくら、やんちゃな私でも、ちゃんと理由はあるわよ」

私は一度決めたら、自分を曲げずにやり通そうとする。
それがどんなにつまらないことでもだ。
その時は石ころを蹴っていた。

「石ころ?それがどうして泥まみれに変わるのよ?」

石ころを蹴る・・・蹴り続ける。
するといつの間にか、そこに自分のルールを作ってしまう。

「ルール?」
「そう、自分ルールをね」

蹴り続けなきゃいけない。
家まで石ころ蹴り続けなければ、悪いことが起こる。

「悪いこと?」
「単なる自分に科するバツみたいなものね」

別に具体的なバツを考えていたわけじゃない。
とにかく蹴り続けなければそうなる・・・と言うことだ。

「もしかして、泥まみれの原因って・・・」
「そうね、石ころはちゃんと家まで蹴って帰ったわよ」

だからこそ、泥まみれになった。

(No.193-2へ続く)

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[No.192-2]想い出はうつらない

No.192-2

「写し損ねた?」

未由(みゆ)が不思議そうな顔をした。

「ごめん、適当なこと言っちゃって」
「ある意味、正解かもしれない・・・字は違うけど」

未由がケータイを操作し始めた。
さすがスマートフォンだ、操作のスピード感が違う。

「これ見て・・・意味分かんないと思うけど」
「メールフォルダ・・・だよね?」

受信フォルダのひとつを表示した。
ただし、データは入っていない。
“選択フォルダにメールはありません”と表示されているからだ。

「・・・移らなかった・・・んだ?」

ここまで出掛かっている答えを探るように聞いた。

「買い替えした時、データが移動しなかったんだ」

その言葉を聞いた瞬間、全てが繋がった。
想い出とはメールのひとつひとつのことだ。
それが誰とのメールであるかは聞くまでもない。

「随分、買い替えしなかったからね」

買い替えなかったのも、こんなことを予想していたからだろう。
ただ、移し替える手段と言うか、やりようはあるはずだ。

「ひとつの区切りにしたつもりなんだ」
「そうね・・・良い機会になったかもしれない」

想い出は移らなかった。
けど、大切に保存されている・・・前のケータイに。
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(No.192完)

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[No.192-1]想い出はうつらない

No.192-1

「おもいではうつらなかったのよね」

未由(みゆ)が、わずかに聞き取れる声量で話した。

「えっ!おもいでは・・・うつらないって?」
「ううん、こっちのこと」

夏の暑さを避けるために、カフェに入った。
未由がケータイをいじり出した途端の一言だった。
気付けば、世間で話題のスマートフォンだ。

「いつ買い替えたの?」
「昨日」
「・・・嬉しそうじゃない・・・みたいだけど」

言われなくても自分から見せびらかすタイプだ。
それがどうだろう・・・いつものテンションを感じない。

「そうかな」
「使い勝手はどう?」
「良いんじゃない?」

質問したつもりなのに、質問で返されたようだった。

「そう言えば、さっきうつらないとか何とか・・・」

未由のテンションの低さは、さっきの一言が無関係ではないだろう。
それに、しきりにケータイを見つめている。

「想い出はうつらなかった」

今度ははっきり聞こえた。
でも“うつらない”とは・・・写らない?それとも、移らない?

「写真でも写し損ねたの?」

間の抜けた問い掛けかもしれない。
だけど、聞かなきゃ始まらない・・・そんな雰囲気だった。

(No.192-2へ続く)

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ホタル通信 No.035

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.12 卒業
実話度:★☆☆☆☆(20%)
語り手:女性

時期的に卒業シーズンであったことから、高校中退と言う事実をそれを元に切り取ってみました。
語り手である女性の私は、イコール作者とは限りません。

小説では高校を中退したのは経済的理由であっても、結果的に綺麗な想い出として残っているように感じられると思います。
かつてのクラスメート達の行動からでも、それを伺い知ることができます。
経済的な理由は事実なのですが、想い出の部分は真逆になります。実際は想い出にすらしたくない、辛いことばかりでした
もしかしたら「こうだったら良いのになぁ」と、空想の世界を描いたのかもしれません。惜しまれて学校を去る・・・そして何年経っても私達はクラスメートなのよ・・・と。

そんな想いを胸に小説を書きました

でも、冬のホタルですから悲しい涙の話は書きません。卒業できなかった事実があるなら、小説の中だけでも卒業しようと考えました。加えて「卒業=数々の卒業ソング」が頭にあったので、それを主軸にした話に仕立てました。

この小説も初期の作品であり、何とも恥ずかしい出来栄えですがラストに何らかのメッセージをしっかり残しています。
直接的には卒業ソングをつなぎ合わせて・・・なのですが、裏には別の想いがあります。
バラバラだった私の“想い出”と言う名のピース。
それがひとつになり、卒業を迎える。でも、卒業したのは私?それとも辛かった想い出なんだろうか・・・
皆さんにこのラストシーンはどのように見えていらっしゃいますか?
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[No.191-2]彼女の友達

No.191-2

僕と彼女、そしてその友達とやがて付き合うことになる。
それに至るまでの過程が当時の流行歌と同じになった。
僕を友達に会わせたことを彼女が悔やむ・・・そんな歌詞だ。

「結局、全てダメになったけどね」
「当然でしょ」

ただ、関係がバレたとか、いわゆる修羅場はなかった。
結果的に僕が“普通”に振られた。

「まぁ、それなら・・・自慢話とは言い難くなるね」

二人に好意を持たれたけど、その二人に振られた。
だから、自慢話にしないんじゃない。

「本当はね、女友達のことがずっと好きだったんだ」
「・・・中学の?」

二股の二人と上手く行くはずがない。
彼女達は仲良し三人組で、そのひとりが女友達だ。

「本命とは付き合えなかった・・・・か」
「青春とはそんなもんさ」

こんな時、青春と言う言葉はありがたい。
色々な想いを一言で包み込んでくれる。

「本命とは進展なしだったの?」
「何もなかった・・・ってことが武勇伝さ」

結局、気持ちは伝えなかった。
いや・・・伝えない方が良かったんだ。

「自慢話よ、やっぱり」
「でも、その勇気は武勇伝に値するわね」

(No.191完)

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[No.191-1]彼女の友達

No.191-1

流行歌の歌詞と同じになった。
当時はそんな感覚しか持ち合わせていなかった。

「もてたこと、自慢したいわけ?」
「そんなんじゃないけど・・・」

高校の時、中学時代の女友達からひとりの女の子を紹介された。
通学途中に見かけ、好意を持ってくれたらしい。
特に断る理由もなく、僕たちは付き合い始めた。

「良く言えば二股できるほど、もてたってことよね?」

さとみとの会話中、つい口がすべった。
・・・・とは言え、たかが学生時代の恋の話だ。

「だから、違うって!」

羽振りの良い話に聞こえる。
でも、自慢話のつもりで話したんじゃない。

「じゃあ、何が違うのよ?」
「武勇伝だよ」
「武勇伝?ひどいわね、二股を武勇伝にするなんて!」

確かにひどい話だ。
僕は付き合い始めた彼女の友達とも付き合いだした。
正確に言えばその友達も僕に好意を持ってくれていた。

「・・・武勇伝だって色々あるだろ?」

言葉の使い方は間違っているのかもしれない。
けど、本当に自慢するための武勇伝ではない。

「だったら最後まで話したらどう?」

(No.191-2へ続く)

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[No.190-2]恋は経験

No.190-2

確かに佳織(かおり)の言う通りだ。
思うことと、実行することは違う。
私の場合は、もっと酷いのかもしれない。

「そうね・・・私なんか“思う”よりも、“思ってる”って感じ」
「強い意志で“思う”んじゃなくて、軽く“思ってる”ってだけ」

もともとは佳織のため息から始まった話だった。
それがいつしか、私がペラペラしゃべりだした。

「ご、ごめん・・・私のことばかり」
「いいよ、私も同じだから」

似た者同士だからこそ、悩みも打ち明けられるのかもしれない。
お互いがお互いの気持ちを代弁する。

「・・・で、話を戻していい?」
「あぁ、そうね・・・私のため息ね」

佳織の話は結局、恋人に最近振られた話だった。

「なんだ、よくある話じゃない」

急に肩の荷が降りたような気分だった。

「でも、ちょっと待って・・・」

佳織が急に真剣な表情になった。
何か重要なことに気付いたような、そんな感じに見える。

「何か悟ったの?」

あえて高貴な表現を使った。

「うん、悟った」
「何を?」
「私達、振られてばかりいるってことよね?」

役に立たない経験は、人以上にしてるのかもしれない。
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(No.190完)

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[No.190-1]恋は経験

No.190-1

「ふぅぅ・・・」
「珍しいわね、ため息付くなんて」

佳織(かおり)にいつもの覇気が見えない。
何事にも前向きで、ため息のイメージには程遠い。

「仕事?恋愛?それとも衣食住?」
「最後の衣食住ってのは何なのよ」

私の冗談に多少、笑みがこぼれる。

「実際はどっちなの?」
「私が仕事で悩むと思う?」
「それもそうね・・・」
「そこで、納得しないのぉ!」

偉そうだけど、これはこれで私なりの気遣いだ。
一人悩んでも始まらない。
今までも、悩み事は打ち明け合っていた。

「恋愛に経験って役に立たないよね」

とっさには判断できない内容だ。
一般的には経験自体、役に立たないわけではない。
だが、相手は“恋愛”だ。

「そ、そうね・・・どうだろう?」

誰に問い掛けたか分からない曖昧な返事をした。

「でも、次からこんな恋はしない・・・って思うじゃない?」

結局、自分に問い掛けてそれに答えた格好になった。
少なくとも自分はそうしてきた。
辛い恋を経験したら、次はきっと・・・と。

「思うことと、実行することは違うよ」

佳織の言ったことは、私にも当てはまる。

(No.190-2へ続く)

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ホタル通信 No.034

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.136 太陽とクシャミ
実話度:★★★★☆(80%)
語り手:女性

クシャミとトイレに行きたくなる体質、これらによって繰り広げられる話はほぼ実話です。

太陽を見ると鼻がムズムズしてクシャミが出る。小さい頃はそれが特異体質だと真剣に思っていました。
小説では、クシャミの話が先で、後からトイレの話が出てきますが、実際はトイレのことを調べたのが先でした。
その時、世の中に大勢同じような人が居ることが分かり「もしかしたら、クシャミも・・・」と調べたのが、小説を書くきっかけです。
加えて偶然、この話をした人が同じような体質であったこともそれを後押ししました。

通常、小説には何らかのメッセージ性を持たせていることが多いのですが、この話は特に何も含ませてはいません。
唯一、後半に登場する「特異体質は、“得意”体質でもある」の部分に、やや隠されているかな・・・と。

話を戻すと、実はクシャミはもう出ません。
小学生の頃は面白がってワザとクシャミをしていたのですが、今は太陽を見ても何も起こりません。ですが、トイレは未だに本屋に行くとしたくなるので長居はできません。

そう考えると、最後に綺麗にまとめるなら、大人になると失われるもの、大人になると手に入れるもの・・・それは決して精神的なものだけではないですよね。
消えてしまった“得意”体質・・・少し、寂しい想いもあります
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[No.189-2]小さな勇気

No.189-2

次の日、ケータイにメールが届いた。

それまでは社内メールだった。
お互いケータイのアドレスを知らなかったからだ。
知らない・・・と言うより、知る必要も教える必要も無かった。

『昨日はありがとう。久しぶりに北海道の話ができたよ』
『確かに!方言丸出しで、なんかスキッリした』

転勤先が関西と言うこともあり、今ではすっかり関西弁だ。
久しぶりに、北海道弁で話した気がする。

このメールが始まりになった。

始まりと言っても、別に恋仲が始まったわけではない。
単にメールのやり取りが始まっただけだ。

それから更に1年後が過ぎた。

「なぁ、メールするきっかけって覚えてる?」

何気なく聞いてみた。
特別な答えを期待することもなく、ただ何となく・・・。

「私が遅れた飲み会の次の日でしょ?」

まさかメールが届くとは考えてもみなかった。
そのことを正直に話した。

「そうね、あえてアドレスを教え合うのも不自然だしね」
「自然な流れ・・・だったんじゃない?」

彼女の言葉にためらいを覚えた。
自然な流れとは言い難い所があるからだ。
念のために・・・と教えたのは親切心があったからではない。

「本当は・・・」
「あなたの勇気に応えてみたんだけど、ダメだった?」

だからと言って、ふたりが恋仲に発展はしなかった。
小さな勇気とは、そんな関係を続けられることにある。

(No.189完)

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[No.189-1]小さな勇気

No.189-1

ことの始まりは今でも鮮明に覚えている。
もしかしたら、僕の小さな勇気だったのかもしれない。

『念のため、メールアドレスと電話番号教えておくよ』

同郷の女子社員と飲みに行く約束をした。

彼女とは、お互いが転勤した後に再び出逢うことになった。
単なる偶然で、運命的なものは感じていない。
それに、もともと仲が良かったわけでもない。

『もしもし・・・ごめん、ちょっと遅れる』
『分かった、あせらずどうぞ』

彼女からの電話だった。
今、電車の中に居るらしい。
実はメールアドレスを教えたのは、こんな時のためだ。
電車の中では電話しにくいだろうから。

(電話か・・・)

もちろん、非通知ではないけど、あることが頭をよぎる。

「アドレス・・・教えたくないのかな・・・」

深く考え過ぎかもしれない。
電話の方が伝達は楽だし、それに誠意も伝わる。
理由はどうであれ、遅刻している。
逆にメールでは失礼だと判断したのかもしれない。

「ごめなさい・・・遅れちゃって・・・」
「そ、そうだなぁ・・・」
「ん?どうしたの・・・?」

遅刻のことより、会社とは違う雰囲気の彼女に驚いた。
良い意味で少し気後れした。

(へぇ・・・別人のようだな)

「まぁ・・・とりあえず、乾杯!」
「うん、それじゃ、再会を祝って乾杯!」

(再会か・・・)

再会してから、約1年後の飲み会開催だった。

(No.189-2へ続く)

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[No.188-2]ブルーメの丘

No.188-2

「メロンパンも作れるみたいだよ」

後日、彼女と会った時に話の続きをした。
ホームページから詳しい情報を手に入れた上でだ。

「ほんまや!知らんかった」

彼女の表情が前よりも一層輝いている。
それから、話はドンドンと膨らんでいった。

「僕の車で行こうか?」
「うん、お昼ご飯は途中で食べて行こか」

本当なら、ブルーメの丘で食事したいところだ。
けど、そうできない理由がある。

「そうだね・・・出発時間から考えると・・・そうなるね」

彼女が外出できる時間が限られている。
だからこそ、スケジュールを細かく決める。
着いたらどんなことをしようか、どこを見て回ろうか。

「アイスクリームも作るのだ!」
「賛成!」

ふたりの話は尽きることがなかった。
それからも具体的に話は進んだ・・・あるひとつのことを除いて。

「めっちゃ楽しみや!」

お互い分かっている。
いくら具体的に話が進んでも、これが実現しないことを。
だから「今度」が、ふたりの前に訪れることはない。

「マグカップの絵付け体験もふたりでせえへんか?」

人生において最も想い出に残る場所になりそうだ。
ふたりとも一度も行ったことがないのに。

(No.188完)

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