[No.186-1]花火
No.186-1
「今夜、花火行かない?」
「花火?」
「あっ!もちろん、みんなとだけど」
出張先の職場の女性に誘われた。
・・・とは言っても会話の通りだ。
「どこで花火大会やってるの?」
「ごめん、言い方が悪かったわね」
彼女はそう言うと、後ろ手に隠し持っていた物を僕に見せた。
何やら派手なパッケージが目に飛び込んできた。
「花火セットだよね?」
言い終わるころに、彼女の言いたいことが理解できた。
「花火をしにいくんだね」
「それ!身内だけの花火大会!」
その夜、どこかの海に連れていかれた。
「送別会も兼ねた花火大会なのよ」
1ヶ月ほど、ここでお世話になった。
それが今日で終る。
仕事上での出逢いとは言え、寂しさも感じていた。
「ありがとう・・・想い出になるよ」
「なに黄昏てんのよ!これからよ、こ・れ・か・ら!」
彼女はそう言うと、ねずみ花火を僕の足元に投げつけた。
「わぁ!こら!あぁ!」
「花火大会開幕ぅ~!」
僕の悲鳴にも似た叫び声で、花火大会は幕を開けた。
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