[No.185-2]忘れ物
No.185-2
「うちね・・・バイトしててん」
「知ってるよ、モデルだろ?」
(もしかして・・・そうなの・・・)
「モデル・・・目指す・・・とか?」
彼女が照れながら小さく頷いた。
これなら悪い話ではないし、むしろ一緒に喜びたい気分だ。
でも、そうハシャゲないのは、あの一言があったからだ。
『そうとも言えへんけどな』
一口にモデルと言ってもその世界は幅広い。
町の広告レベルから、それこそ手の届かないレベルまである。
「うん、モデル業、続けようと思うんや」
「そっか・・・目標があれば何でもいいさ」
それから彼女は本当にモデルの道を選んだ。
彼女に逢うと、懐かしそうに自分から学生の頃の話をしてくる。
「後悔はしてへんけど・・・」
そして、いつも歯切れが悪くなる。
でも、その言葉に嘘はないと思う。
「・・・忘れ物したんやろか、学校に」
「忘れ物?」
何らかの気持ちを学校に残して来たということだろうか。
「・・・なら取ってくる、そして俺が持っておくよ」
(No.185完)
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