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[No.185-1]忘れ物

No.185-1

「そう言えば・・・卒業したの?」

何とも季節外れなことを聞いた。
したたり落ちる夏の汗に似合わないセリフだった。

「看護学校のこと?」
「あぁ、何もなければもう卒業してるだろ?」

気遣って、あえて聞かなかったわけではない。
単純に卒業しているものだと思っていたからだ。

「卒業はしたんやけど・・・」

隠すつもりはなさそうだが、歯切れが悪い。

「資格は取らへんかった」
「え・・・看護師になるつもりだったんだろ?」

この後、しばらく沈黙が続いた。
答えを渋った彼女・・・余計なことを聞いたと反省する僕・・・。

「・・・夢とゆうか・・・気持ちが変わったんよ」

先に口を開いたのは彼女の方だった。

「それなら別に悪いことじゃないだろ?」
「そうとも言えへんけどな」

再び沈黙が続いた。
もう一度答えを渋った彼女・・・この先を聞こうかと迷う僕・・・。

「聞いてもいい?」

今度は僕が先に口を開いた。

(No.185-2へ続く)

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