[No.185-1]忘れ物
No.185-1
「そう言えば・・・卒業したの?」
何とも季節外れなことを聞いた。
したたり落ちる夏の汗に似合わないセリフだった。
「看護学校のこと?」
「あぁ、何もなければもう卒業してるだろ?」
気遣って、あえて聞かなかったわけではない。
単純に卒業しているものだと思っていたからだ。
「卒業はしたんやけど・・・」
隠すつもりはなさそうだが、歯切れが悪い。
「資格は取らへんかった」
「え・・・看護師になるつもりだったんだろ?」
この後、しばらく沈黙が続いた。
答えを渋った彼女・・・余計なことを聞いたと反省する僕・・・。
「・・・夢とゆうか・・・気持ちが変わったんよ」
先に口を開いたのは彼女の方だった。
「それなら別に悪いことじゃないだろ?」
「そうとも言えへんけどな」
再び沈黙が続いた。
もう一度答えを渋った彼女・・・この先を聞こうかと迷う僕・・・。
「聞いてもいい?」
今度は僕が先に口を開いた。
| 固定リンク | 0
「(008)小説No.176~200」カテゴリの記事
- [No.200-2]ホタルノヒカリ(2010.09.21)
- [No.200-1]ホタルノヒカリ(2010.09.19)
- [No.199-2]環境が人を変える(2010.09.17)
- [No.199-1]環境が人を変える(2010.09.16)
- [No.198-2]せいじゅうろうを探せ!(2010.09.14)
コメント