[No.183-1]ベルサイユのばら
No.183-1
「ねぇ、ねぇ、ランチ何にする?」
敦子(あつこ)が甘えた声を出している。
「ちょ、ちょっと暑いからベタベタしないの!」
夏だと言うのに敦子の食欲が落ちる気配がない。
何ともその元気が羨ましい。
「先週オープンした店、行ってみない?」
提案されているようで、内心強制と感じる。
(確か、行列ができていたっけ・・・)
人気の様子がテレビでも放映されていた。
先週のオープンでもあり、楽に食べられるとは思えない。
でも、敦子の勢いを止められそうにない。
「混んでるわよ、きっと」
「だから、いいんじゃない!」
(だから、行列が行列を生むんじゃない・・・)
「仕方ないわね・・・」
勇み足でその店へ向かった。
もちろん、それは敦子であり、私の足取りは重い。
私にとってのランチは食事の時間であり、休憩時間でもある。
だからわざわざ、混んでいる場所には行かない。
「・・・で、何食べるの?」
「バイキングなんだよ、バイキング!」
なるほど・・・食いしん坊な敦子にピッタリな場所だ。
「・・・今、私のこと考えてたでしょ」
「ち、違うわよ」
「どうせ、私は食いしん坊ですよ」
それでも敦子の足取りが止まることはなかった。
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