[No.182-2]汚れた世界
No.182-2
「うちな・・・その人と結婚を前提に付き合ってるねん」
「えっ!結婚・・・」
結婚することに驚いたわけではない。
話を戻せば父娘の不仲は、結果的に彼との不仲になる。
「その人とはうまく行ってないんだよね?」
「そやけど、ええねん」
ええねん・・・前向きな発言ではない。
むしろ、諦めにも似た、後ろ向きな発言だと感じた。
「住むところがあれば、それでええねん」
幼い頃から衣食住に苦労し、加えて大人の事情が彼女を苦しめた。
「ふぅ・・・それにしても、相変わらずサラリと言うよな」
衝撃的な発言も、彼女の前では普通に感じる。
時にはあまりにも凄過ぎて、“笑”撃になる場合さえある。
「“笑”撃って、笑うところちゃうし」
そう言いながらも、笑顔で突っ込んでくれる。
重い話を笑い話に変える・・・彼女はそんなパワーを持っている。
「でも、うち・・・汚れてるやろ?こんな生き方しかでけへんし」
以前も聞いたことがある、自分は“汚れた世界”の住人だと・・・。
「汚れてるなら、洗えばいいよ」
「上手い冗談やん」
なにも、中身が腐っているわけじゃない。
簡単なことだ・・・汚れたら洗えばいい。
そしたら、また輝き出す。
(No.182完)
| 固定リンク | 0
「(008)小説No.176~200」カテゴリの記事
- [No.200-2]ホタルノヒカリ(2010.09.21)
- [No.200-1]ホタルノヒカリ(2010.09.19)
- [No.199-2]環境が人を変える(2010.09.17)
- [No.199-1]環境が人を変える(2010.09.16)
- [No.198-2]せいじゅうろうを探せ!(2010.09.14)
コメント