[No.182-1]汚れた世界
No.182-1
幼い頃から刻み続けられた記憶・・・。
彼女はその呪縛から逃げ出すことができずに居る。
「うち、この前、北海道に旅行に行ったやん」
“冬の北海道”を満喫するには、やや早い時期だったと思う。
「あぁ、旭川だろ?」
薄っすらと雪化粧した風景の写メが記憶に残っている。
「お父さんと行ったんだよね?」
この時、多少、違和感を感じていた。
世間では仲の良い父娘関係は、特段珍しくもない。
ただ、彼女の場合は逆だった。
そんな関係で「旅行に行く気になったな」と感じていた。
「本当は違うねん・・・今、一緒に住んでる人と行った」
「住んでる人?それがお父さんだろ?」
菜央(なお)が事情を話し始めた。
今まで会話に出てきたお父さんは、全て彼氏のことだったらしい。
確かに今思えば、しっくりこない話も多かった。
「・・・黙ってたら、隠し通せたのに、どうして?」
「うちもわからへん」
全くそれを感じていなかったわけでもない。
菜央と別に付き合ってはいないし、彼女は自由の身だ。
僕がとやかく言う筋合いもない。
「薄々感じてたけど正直・・・驚いた」
「もうひとつあるねん」
「・・・もうひとつ?」
僕は一日で、2度驚くことになった。
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