[No.178-2]夏の始まり
No.178-2
「もぉ!答え分かってたんでしょ」
「ごめん、ごめん!面白すぎて答え言いそびれた」
最初の悲鳴は、足がつったものではない。
それは説明されなくても分かる。
「結局、何なのよ?」
「だ・か・ら、海に足を入れてみて・・・」
「・・・って、足が言ってたもんね」
「こらぁ!」
しかし、いざ入れてみろと言われると何だか緊張する。
もしかして、クラゲでも居たのだろうか・・・。
恐る恐る海に近付き、足を入れようとした
「そんなんじゃ、悲鳴は出ないよ」
友人がそう言うと、私を軽く突き飛ばした。
「ギャャアァー!」
突然押され、この世のものとは思えない悲鳴が出てしまった。
それから、つんのめるかのように二、三歩前に歩いた。
「キャッ!」
「それよ、それ!」
友人が満足そうな顔をする。
押されて意思に反して、足が海に入ってしまった。
「案外、冷たいでしょ?」
波が静かに引いて行く。
夏の1ページは、こんなたわいもないシーンから始まった。
(No.178完)
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