[No.178-1]夏の始まり
No.178-1
「キャッ!」
とても短いけど、甲高い声がした。
「何か踏んづけた?」
悲鳴だと言うのに、やけに冷静に話し掛けてしまった。
そんな大変なことが起こる場所に居ないからだ。
「いやに冷静ね!」
「だってそんなに人も居ないし」
夏本番を前にして、海にはまだ人影もまばらだった。
こんな場所じゃ、ハプニングもたかが知れている。
「何か踏んだわけじゃないよ」
ようやくさっきの答えが戻って来た。
「じゃ、何があったのよ」
友人が無言で片足を上げ、海の方をチョンチョンと、“足”さした。
私の認識力が凄いのか、友人の表現力が凄いのか・・・。
どうやら「海に足を入れろ」と言ってるらしい。
(しばらく、付き合ってみよう・・・)
なんともゼスチャーゲームのようで面白い。
わざと分からない振りをして、友人の反応を見た。
だんだんと“足”さすことに、力が入りだしている。
「ギャアァ!」
友人が再び悲鳴を上げ、その場に倒れこんだ。
運良く砂浜がクッション代わりになった。
「足つったぁ!」
ゼスチャーゲームが終了した。
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