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[No.177-2]時の引換券

No.177-2

『・・・あかつき・・・』

祖父母が住んでいた長崎へ向かう列車の名前だった。

中学にあがる前までは頻繁に長崎へ連れらて行った。
それが卒業を機に足が遠のいた。
両親のせいでもない・・・誰がどうした、ということでもない。
でも、自然な流れと言ってしまえば、それまでになってしまう。。

誰にも責められたりしないのに、妙に言い訳したくなる。

『色々な意味で時代の流れなんでしょうね』

確かに大幅に時間は短縮された。
一晩掛けて辿り着いていた場所は、今や数時間あれば足りる。
けど、その時に失われたものも多いはずだ。
時間と引き換えに手にしたものは・・・そんなに多くない。

『今は予約が取り難いそうですね』

子供にとって列車の旅は案外きつい。
環境と心境が重なって、寝苦しかったことを特に覚えている。
子供心に寝台車を楽しむ余裕などなかった。

『夜行列車が昔のように増えるといいですね』

時間と引き換えに何かを取り戻したい。
そんな想いで人は再び切符を手にするのだろうか。

(No.177完)

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