[No.175-1]ポストの前で
No.175-1
通勤路に郵便ポストがひとつ立っている。
何の変哲もない、どこにでもある赤いポストだ。
そのポストの前で、ちょっとした事件に巻き込まれた。
「事件・・・?尋常じゃないわね」
「ゴメン!大袈裟すぎた・・・ハプニングよ」
そのポストは小学校のすぐ近くにある。
そのためか、度々手紙を入れようとしている小学生達に出逢う。
「それ、低学年の子でしょ?」
事件・・・言葉の影響だろうか、友人が妙な推理を始めた。
しかし、ハズレていないところが、ちょっとくやしい。
「まだ、携帯は早いだろうし」
「で、事件・・・じゃなくて、そのハプニングってなに?」
一人の女の子が手紙を入れようとしていた。
けど、小さい彼女にとってはそれは難関だった。
「それで、代わりに入れてあげることにしたの」
手紙を受け取ると、その子はお礼を言って去って行った。
「いい話じゃない・・・どこにハプニングが?」
「何気なく手紙を見たらね・・・」
「うんうん」
友人が明らかに食い付いている。
「受取り人の名前以外、何も書かれてないの」
「それじゃ、届かないじゃん!」
それどころか、差出人に戻ることもない。
結局、ポストに入れられず、途方に暮れた。
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