[No.174-1]心地よい
No.174-1
「それ、分かる」
結衣(ゆい)から、度々発せられる言葉だ。
別に口癖を指摘したいわけではない
「私もね・・・・」
僕の話に同調してくれて、妙に気が合う部分が多い。
ただ、俗に言う“馬が合う”とはちょっと違う気がする。
それに、単に会話上手なわけでもない。
ある時、食べ物の好き嫌いの話をしたことがあった。
「牛乳とかチーズとか、とにかく乳製品がダメなんだ」
「じゃあ、ピザとかも?」
もちろん、“チーズべっとり”のピザは論外だ。
それに、そのイメ-ジは困った問題を引き起こす。
「チーズ抜きのピザがあってね」
「それなら、大丈夫でしょ?」
結衣が割り込むように、すかさず応えた。
「ピザの上にマヨネーズが掛けてあって・・・」
「それもダメなわけ?」
もちろんマヨネーズは嫌いじゃない、むしろ好きだ。
けど、生地と共に焼かれると、何となくチーズっぽくなる。
そう思い込むと、もはやそれはチーズ以外の何物でもない。
「変だとは思うけど、そうなんだよね」
「それ、分かる」
「私もね、同じような食べ物があるの」
最初は僕に気を遣ってくれているのかとも思った。
話を合わせてくれているのだと・・・。
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