[No.172-2]一瞬の未来
No.172-2
「撮るって・・・未来を?」
「だから、さっきからそう言ってるじゃん」
どうやら冗談ではないらしい。
「いつ、どこでよ?」
「そうね・・・今、ここでもいいけど」
そう言うと、友人がカメラを構える。
「わぁ!いきなりやめてよ」
「冗談よ・・・そうだ!吉田が好きだってさ」
「エッ・・・」
「はい!いただきぃー」
私がたじろいだ表情を見せた時に、シャッターが押された。
「今の、なしだよぉー!」
多分、有り得ない顔をしていたと思う。
いや・・・多分じゃなく、間違いなくそうだ。
「未来どころか、最悪の決定的瞬間じゃない!」
「そう?じゃ、次の写真展に出させてもらうから」
友人は見事、優秀賞を取り、そこで初めてあの時の写真を見た。
予想通り、有り得ない顔をした私が写っていた。
写真でもハッキリ分かるほど、赤ら顔の私が・・・。
受賞のコメントには、一言こう書かれてあった。
『彼女の未来を撮りました』
カメラはその一瞬を撮るのではない。
目の前の出来事から、ほんの一瞬先の未来が撮れるんだ。
(No.172完)
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コメント
あああ~ なるほど^^ ホント そうなんですね^^
物語が語りかけてくれるような写真ってありますよねw
それって 一瞬未来を撮れているんだ
だから 未来が語りかけてる
なんか 納得しちゃいましたぁ^^
投稿: なっち♪ | 2010年6月10日 (木) 00時21分
この話のヒントになったのは、リンク


させて頂いている方のブログに掲載さ
れていた一枚の写真です。
写真って、ちょっとだけ未来が撮れる
んですよね
写真だけでしか見れない未来・・・
何を語りかけてくれるのでしょうね
投稿: Re:なっち♪さんへ | 2010年6月10日 (木) 22時55分