[No.172-1]一瞬の未来
No.172-1
『未来を“先撮り”するカメラ』
とあるデジカメに付けられたキャッチコピーだった。
先取りと先撮りをかけている。
いわゆる次世代の高性能カメラ・・・ということらしい。
「なんか、いい写真が撮れそうでしょ?」
何か嫌な予感をさせる、友人の弁だ。
「もちろん、腕前があってのことだけどね」
「・・・で、そのカメラがそうなんだ?」
「分かっちゃった?でさぁ・・・・」
分かるも何も、明らかにそのつもりで話題を振ってきている。
確かに、友人の腕前は認める。
ただ、学校の写真部という、ごく限られた範囲での話だ。
(未来を・・・か・・・)
キャッチコピーではなく、それが本当なら・・・つい空想してしまう。
カメラは今まさに、その一瞬を切り取る。
過去でもなく、未来でもない、その一瞬を。
「ねぇ・・・ちょっと聞いてる?」
「ん?なに・・・」
「頭の中、写真に撮ろうか?」
つい空想にふけってしまい、友人の自慢話が耳に入らなかった。
「本当に未来が撮れるカメラ、想像してたんでしょ?」
「えへへ・・・アタリ・・・」
「じゃ、撮ってあげる」
「えっ!」
何を言われたのか、しばらく理解できなかった。
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