[No.171-1]りゅうとりゅうた
No.171-1
実家の庭の隅に、小さな石が積み上げられている。
ふたつ、ひっそりと・・・。
「ねぇ、もう何年になるかな・・・」
「どっちから数えて?」
私が高校生の時に、まず“りゅう”が家に来た。
足取りもおぼつかない小さな体に、大きな目が印象的だった。
「りゅうから数えたら、10年は経つのかな」
それから私が実家を離れた後に、“りゅうた”がやって来た。
初対面の頃には、すでに大きな体だった。
でも、どっちも茶トラ猫で、見た目もそっくりだった。
「違い・・・って、覚えてる?」
そっくりとは言え、違いがないわけではない。
りゅうたの方が尻尾がやや短く、白い部分が多い。
「気性はりゅうたの方が激しかったよね?」
訪問客にそれとなく近付き、多少本気で噛み付いていた。
「私にはそれ、無かったんだよね」
初対面の時は甘い声で、じゃれ付いてくるほどだった。
その仕草は、りゅうと見間違えるほどだった。
「何となく分かるんじゃないの?」
「身内なのか、そうじゃないのか、ってね」
確かにそうかもしれない。
事実、今でも特別猫が好きってわけじゃない。
りゅうもりゅうたも家族の一員・・・そんな感じだった。
(No.171-2へ続く)
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