[No.170-2]窓に映る私
No.170-2
「相手が外ばかり見ていたら・・・」
「自分に対して興味が無い、ってことじゃないの?」
「そう思うでしょ?でも違うんだ」
麻貴(まき)が自信満々に答えた。
「まぁ、説明する前に試してみましょうか、女同士だけど」
いつもの店へ向かい、あえて窓際を選んで座った。
「じゃ、私が時々外を見るから」
そう言うと会話の節々で外を見る・・・やはり、良い気はしない。
興味がないのか、話がつまらないのか・・・そんな気持ちになる。
「やっぱり、興味がないように見えるけど」
「そう?じゃ、今度は逆の立場で」
今度は私が外を見るようにした。
(・・・別に・・・どうもしないよね?)
逆の立場になれば、何か分かるような麻貴の口ぶりだった。
「どうだった?」
「これと・・・言って・・・」
ことの真相は随分後になって分かることになった。
「でも・・・どうして私を選んでくれたの?」
付き合いだしてから、丁度、2年が経過する。
例の異業種交流パーティで知り合った男性だ。
「私、外ばかり見てたのに・・・」
「僕に興味が無かったからじゃないだろ?」
「そうだけど・・・どうして分かるの?」
以前、友人と同じようなシチュエーションで試したことを話した。
「あの会場は、特に・・・だったからね」
「えー、なにが?」
彼は外を眺める私を見ていたのではなかった。
窓に映る、私の表情を見ていてくれたんだ。
(No.170完)
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