[No.179-2]確実な一品
No.179-2
「気になるやろ?」
「そりゃ・・・ねぇ・・・」
骨董品?・・・それとも美術品とかだろうか。
どんどん妄想が膨らんで行く。
「それね、人から貰ったんよ」
「えっ!タダだったの?」
その人も太っ腹だと思う。
そんな一品を惜しげもなく、あげてしまうなんて。
(・・・ん?何か楽しそうな顔だな)
さっきまでの顔に“楽しさ”が加わったように見える。
「もしかして、からかわれてる?」
「なんで?」
「そんなすごい一品、タダで貰えるわけないだろう」
冷静に考えればそうだ。
歴史的価値のある一品を手にすることは、たやすいことではない。
「それ妄想やん」
「うち、確実な一品としか言ってへんし」
(ハッ!そうだった・・・)
いつしか匠の技だとか、歴史的価値がどうとか決め付けていた。
「一体何なんだよ・・・その一品って?」
一気に結論に向かった。
「ずいぶん、“苦労”と言う代償を払ったけどな」
「手に入れたねん、“幸せ”と言う一品を」
その眼差しは僕に向けられているような気がした。
(No.179完)
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