[No.169-2]重いな・・・
No.169-2
「相変わらず、重いな」
一瞬惑うほど、数日前と全く同じセリフを言われた。
痛めた足首がまだ完治していない。
そこにきて、目の前に急な階段が立ち塞がった。
そのために、また貴志の背中を借りることになってしまった。
「またぁ!失礼な・・・」
途中まで言いかけたけど、なぜだがその先が言えなかった。
彼がいつになく穏やかな表情だったからじゃない。
その言葉の意味に、今、ようやく気付いたからだ。
「ごめん・・・」
「何のこと?」
始めはとぼけていた貴志も、すぐに私の想いに同調してくれた。
「体はきゃしゃなんだけどな」
貴志の表情はさっきにも増して穏やかだった。
他人からすれば、チグハグな会話をしているように見える。
「支えられそう?」
「どうかな・・・結構、重いしな」
私の過去までも背負ってくれる、彼の足取りは力強い。
「そのうち軽くなるよ、ダイエットと同じ」
私は返事をせず、黙って背中に顔を埋めた。
(No.169完)
| 固定リンク | 0
「(007)小説No.151~175」カテゴリの記事
- [No.175-2]ポストの前で(2010.06.16)
- [No.175-1]ポストの前で(2010.06.15)
- [No.174-2]心地よい(2010.06.13)
- [No.174-1]心地よい(2010.06.12)
- [No.173-2]イバラの道(2010.06.10)
コメント