« ホタル通信 No.023 | トップページ | [No.168-2]鉄道員 »

[No.168-1]鉄道員

No.168-1

小学生の時、図工の時間にオルゴールを作った。
作ったと言っても、箱自体は完成品だった。

「じゃあ・・・何を作ったのよ?」

佐江(さえ)が、もっとものことを言った。
僕の誕生日のプレゼントにオルゴールを貰った。
それが話のきっかけになった。

「フタの部分に彫刻したんだ」
「彫刻・・・彫るってことよね?」

皆、思い思いのデザインを施した。

「あなたは?」
「俺?あぁ・・・カブトムシ」
「・・・」
「聞いといて何だよ」

別の答えを期待していたようだが、小学生ならこんな程度だ。
自分の好きな物を彫っただけだ。

「結構、大変だったんだぞ」
「ふ~ん・・・で、曲は?」

カブトムシのくだりはもう終ったらしい。
あっけなく、本題へ移った。

「曲・・・?」
「オルゴールなら、カブトムシよりそっちでしょ!」

確かにそうだ。

「実は・・・」
「どうせ覚えてないでしょうけどね」

佐江の言葉とは裏腹に、今でも記憶に残っている。

(No.168-2へ続く)

| |

« ホタル通信 No.023 | トップページ | [No.168-2]鉄道員 »

(007)小説No.151~175」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.168-1]鉄道員:

« ホタル通信 No.023 | トップページ | [No.168-2]鉄道員 »