[No.168-1]鉄道員
No.168-1
小学生の時、図工の時間にオルゴールを作った。
作ったと言っても、箱自体は完成品だった。
「じゃあ・・・何を作ったのよ?」
佐江(さえ)が、もっとものことを言った。
僕の誕生日のプレゼントにオルゴールを貰った。
それが話のきっかけになった。
「フタの部分に彫刻したんだ」
「彫刻・・・彫るってことよね?」
皆、思い思いのデザインを施した。
「あなたは?」
「俺?あぁ・・・カブトムシ」
「・・・」
「聞いといて何だよ」
別の答えを期待していたようだが、小学生ならこんな程度だ。
自分の好きな物を彫っただけだ。
「結構、大変だったんだぞ」
「ふ~ん・・・で、曲は?」
カブトムシのくだりはもう終ったらしい。
あっけなく、本題へ移った。
「曲・・・?」
「オルゴールなら、カブトムシよりそっちでしょ!」
確かにそうだ。
「実は・・・」
「どうせ覚えてないでしょうけどね」
佐江の言葉とは裏腹に、今でも記憶に残っている。
| 固定リンク | 0
「(007)小説No.151~175」カテゴリの記事
- [No.175-2]ポストの前で(2010.06.16)
- [No.175-1]ポストの前で(2010.06.15)
- [No.174-2]心地よい(2010.06.13)
- [No.174-1]心地よい(2010.06.12)
- [No.173-2]イバラの道(2010.06.10)
コメント