[No.167-1]らせん
No.167-1
時より世界は交じり合う。
そう思える時が一度や二度、必ず訪れる。
「結局、住む世界が違ったのよね」
麻由(まゆ)がなんともアンニュイな顔をする。
住む世界が違う・・・。
自分自身を見下げて言うことがある。
逆に相手を蔑(さげす)んで言う場合もあるだろう。
「そんな相手に出逢ったわけ?」
「お互い手の届く範囲にいなきゃだめってこと」
異なる世界の住人が出逢う・・・。
決して大袈裟な表現ではないことは私も分かっている。
「流れからすると・・・」
「そうよ、元の世界に帰った・・・と言えばいい?」
「宇宙人みたいね」
「それ、最高!」
重々しい空気を一変させる一言になった。
それは半分冗談でもあり、核心をつくものでもある。
「ただね・・・それぞれの世界を行き来するんじゃないの」
一旦、終ったような話を続けた。
「時より、別の世界と交わる」
「それは何となく聞いたよ」
「そう・・・世界はらせん状になってるの」
更に空気が重くなった気がした。
「・・・どう?キマったでしょ?」
麻由が勝ち誇った表情を浮かべた。
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