[No.166-2]退屈な時間
No.166-2
「あれ・・・?」
「どうした?」
菜緒がせいじゅうろうをひとつ、手に取った。
「これ・・・買った覚えがないんやけど」
パッと見では、緑の丸い塊を背負ったような感じだ。
「何だろう・・・草もち?」
(いや、そっち・・・の方向じゃなくて)
「何かのボールかな?」
(・・・微妙だけど、その方向で・・・)
「その前に、なんでこれがあるんやねん?」
話を振り出しに戻ってしまった。
そのストラップは菜緒の目を盗んでさっき俺が混ぜたものだ。
「その・・・あれだ・・・ま・・・と言うか・・・」
その緑の正体をつい口にしそうになった。
できれば菜緒に当ててもらいたい。
「沢山あるから思い出せないだけじゃない?」
「そうなんやろか・・・」
「そう!絶対そうだって!」
こうなるなら、素直に渡した方が良かったかもしれない。
「実は・・・」
「あぁー!もうちょっと考えるから待ってや」
俺を遮るかのように菜緒が割り込む。
もしかしたら、菜緒は知らない振りをしているだけかもしれない。
俺がこのストラップを混ぜたこと、そして緑の正体も。
だから、ふたりには退屈な時間は流れない。
(No.166完)
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