« [No.165-1]望郷の影 | トップページ | ホタル通信 No.022 »

[No.165-2]望郷の影

No.165-2

「なんか変な感じね」
「グレー・・・かな」

一見すると無塗装にも見える。
それでも、見た目はそっくりだ。
それから、しばらく会話が止まった。

「ねぇ、お盆休みどうする?」
「帰らないつもりだったけど・・・」
「私も、同じ」

再び会話が止まる。
敦子(あつこ)も同じ考えのようだった。
思いのほか住み慣れた町の光景と重なったはずだ。

「風が・・・気持ちいいね」

体には感じない。
木々の葉がささやく程度に揺れた。
敦子はそれを、そう表現した。
 
「見えてないでしょ?」
「何よ、その質問?」

敦子のリラックスモードを見ていると、つい聞いてしまった。

「目の前の光景のことよ」
「なんだ・・・そうね、見えてないね」

敦子も私も見えていない。
見えているのは望郷の影だ。

夕日にテレビ塔が赤く染まる。
そこには見慣れた赤いテレビ塔が立っていた。

(No.165完)

読み終えたら、クリックして頂けると、励みになります。
ブログランキングへ ブログランキングへ web拍手

| |

« [No.165-1]望郷の影 | トップページ | ホタル通信 No.022 »

(007)小説No.151~175」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.165-2]望郷の影:

« [No.165-1]望郷の影 | トップページ | ホタル通信 No.022 »