[No.162-2]ある場所の奇跡
No.162-2
「それ、どこか分かるよ」
璃子(りこ)が、何のためらいもなく答えた。
映画、ゲーム、SFを繋ぐキーワードは未だ見つからない。
けど、それらの要素を全て含む人なら、目の前に居る。
「・・・うそ・・・どこよ?」
冗談とも思える即答ぶりに、多少の疑問を抱いた。
「疑ってる・・・聞いといて?」
「だって・・・」
後に続く言葉が見つからない。
期待通りに答えを出してくれたのに、なんだが釈然としない。
余りにも、あっさり答えられたせいかもしれない。
「その人が地元の人だとすれば・・・」
「すれば・・・?」
ピンポイントでその場所を当てられると言う。
「多分、あの場所ね・・・で、さぁ・・・」
「分かってる!車でしょ?」
もうひとつのキーワード・・・車で走りながら見る。
その条件も満たしているようだ。
「じゃ、同じく・・・日曜日に」
日曜日、友人とふたりでその場所へ向かった。
あえて、どこに行くのか聞いていない。
「もうすぐよ」
「えっ!まだ、高速道路降りてないよ」
その場所へ向かうために、高速に乗った気でいた。
「ほら、ここよ」
右へカーブしている道を走りながら、左手にそれが現れた。
なるほど・・・見れば納得できる。
「あぁー!もっとゆっくり走ってよぉ!」
気付けば大声と共に、コンビナートが視界から消えていった。
(No.162完)
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