[No.162-1]ある場所の奇跡
No.162-1
『・・・うん、そうね、あの景色はきれいだったよね』
店内のBGMが途切れた瞬間に、フッと耳に飛び込んできた。
隣の席の女性が、携帯電話で小声で話している。
『映画やゲームのワンシーンを思い出さない?』
(映画・・・夕暮れの海とか、かな?)
気付けば、会話に聞き耳を立てていた。
『・・・そう、そう!SFっぽいしね』
(SFっぽい?)
さすがに夕暮れの海は違うと分かる。
映画、ゲーム、SF・・・何か繋がりがあるようには感じる。
それぞれを繋ぐキーワードは何だろうか・・・。
(あっ!何、人の話に夢中になってるのよ!)
自分で自分に言い聞かせた。
良く言えば人間観察だし、悪く言えば盗み聞きだ。
『断然、遠くから見た方がもえるよ』
(もえる・・・萌える・・・ってこと?)
遠くと言うことは、かなり広大な景色だと言うことだろう。
あるいは大きな建造物とか・・・。
『ねぇ、ねぇ、今度いつ行く?』
『・・・日曜日?・・・分かった・・・』
『今度は、もうちょっと、ゆっくり走ってよ』
会話はそこで終った。
私の心に、大きなモヤモヤ感が残った。
(ゆっくり走る・・・車だろうか?)
車で見なければならないほど広大な景色・・・。
確かに映画やゲームの壮大感にも繋がる。
ただ、残念なことにその答えを知ることが出来ない。
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