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[No.157-1]いつものアレ

No.157-1

「ごめん、ちょっと待って」

遥(はるか)が、急にしゃがみこんだ。

(・・・いつものアレか)

他人が見れば、体の不調のように見えてしまう。
けど、そうじゃないことはすぐに分かる。

「靴ひもか?」
「うん、結び直すから」

結び直す・・・その言葉通り、結び直すのに他ならない。
ただ、彼女にとっては違う意味も含まれている。
多分、自分では気付いていないと思うが・・・。

「映画見るだけなのに、随分気合入ってるな?」
「気合・・・?なんのこと?」

やはり、気付いてないらしい。
彼女は気合を入れる時、直前に靴ひもを結び直すクセがある。
その対象は、大から小まで様々だ。

「・・・いや、そんな気がしただけ」
「変なこと言う人ね」

3Dで話題の超大作の映画だ。
それだけ、楽しみにしているって、ことだろうか。

そうなると・・・。
あの時、結び直さなかったのが、また気になり始めた。
いい機会だ・・・話してしまおう。

(No.157-2へ続く)

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