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[No.151-2]ケース・バイ・ケース

No.151-2

「そうやって、いつも逃げてばかりいるよぉ?」

結論を先延ばしした結果がこれだ。
何も決まらないまま、旅立ちの日を迎えた。

「・・・ごめん、そんなつもりじゃ・・・」
「私だって・・・」
「もっと早く、口にしてたら良かった」

彼の責任ばかりじゃない。
私だって、その言葉に甘えていた。
・・・と言うよりも、結論が怖かったのかもしれない。
先延ばしのツケが、一番大切な時に回ってきた。

「・・・もう、時間だよ」

列車の到着を知らせるアナンスが流れ始めた。

「もう、行かなきゃ・・・」

彼に言ったようで、自分に言ったようなニュアンスになった。

「待てよ!」
彼が私の腕を掴み、そのまま抱き寄せた。
「乗り遅れるよ?」
「いいんだ・・・こんな時こそ、使わなきゃいけないんだ」

これを最後に彼の口から、その言葉を聞くことはなくなった。

(No.151完)

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