[No.149-2]それぞれのイベント
No.149-2
「卒業式?」
帰社後、同僚にそのことを話した。
「そんな季節になったのね・・・」
何かを想い出すような口調だった。
「卒業式って、ある意味最大のイベントだよね」
「そうだけど、そうじゃないとも言える」
「どう言う意味?」
「人ぞれぞれにイベントがあるってこと」
確かに卒業式自体に何かあるわけじゃない。
それに何日前から、イベントが始まる人もいる。
「そんな経験あるんだ、で・・・した方?された方?」
「・・・した方・・・」
あの日、ずっと好きだった人に告白した。
卒業を前にして、気持ちをおさえることができなくなった。
「まさしく、人それぞれのイベントだね」
「・・・聞かないの?」
「何を?」
「・・・その結果」
何を差置いても、それを聞いてくるタイプの同僚だ。
「私が聞きたいのは結果じゃないよ」
「じゃ、何よ?」
「どうして、今は“意気地なし”なのか、ってこと」
「わ、分かったわよ・・・」
あの日、片思いは実らなかった。
けど、意気地なしじゃなかった。
(No.149完)
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