[No.146-2]月を恐れぬ女
No.146-2
「そぉれならぁ、みかづきをくれてやるわぁよぉ」
酔いも手伝って、完全にオヤジ口調だ。
それに、できやしないことまで口にしている。
「ハイ、ハイ!ありが・・・とう・・・」
適当にあしらおうと思ったのに、また彼女の目が光った。
それに、ニヤリと不敵な笑みも浮かべている。
「うそぉだとぉ思ってぇるぅでしょお~?」
「もちろんよ」
それにしても彼女の酒癖がこんなに悪いとは・・・。
やはり、満月のせいなのかもしれない。
「ちょっとぉ、こっちぃきて!」
彼女が強引に私の腕を掴んで引っ張る。
「ど、どこ連れていくのよ!」
その時だった。
「おりゃぁー!」
氷った水たまりを踏んづけた。
「これでどう?」
水たまりが割れ、その何枚かを手にとった。
「・・・確かに」
氷に映りこんだ満月が三日月のように欠けて見える。
それ以来、彼女はこう呼ばれるようになった。
“月を恐れぬ女”と・・・。
(No.146完)
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