[No.144-2]彼の傷
No.144-2
「知っての通り、僕の人生はお世辞にも幸せじゃない」
「子供心に、随分傷付いたしね」
彼の瞳が遠い過去を見ている。
「でも・・・」
「そんな僕でさえ、誰かを傷付けてると思う」
「知らず知らずのうちに」
「ねぇ、今度は私が聞いていい?」
「なに?」
「どうして、そんなに強いの?」
痩せ我慢ではない・・・穏やかさの中に、強さを感じる。
本当は傷だらけのはずなのに・・・。
「強い・・・?僕が?」
彼がキョトンとした顔をした。
けど、すぐさま大笑いに変わった。
「もぉ!笑わないでよぉ!」
「ごめん、ごめん、考えてもみなかったよ」
「と・に・か・く・・・ごめんね」
もう一度、彼に謝った。
「どれがどの傷か、もう覚えてないよ・・・多すぎてね」
呼吸を整えるかのように、静かに微笑んでくれた。
(No.144完)
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