[No.144-1]彼の傷
No.144-1
心は傷付きやすい。
・・・なのに知らず知らずのうちに、傷付けてしまう。
「ごめん、知らなかったの」
広く世間の話題を口にしたつもりだった。
けど、それが偶然、彼の生い立ちと重なった。
知らなかったとは言え、彼を傷付けてしまった。
「気にするなよ」
彼は笑顔で応えてくれた。
その言葉に嘘はないと思う。
ただ、想い出させてしまったことには間違いない。
「本当に大丈夫だから」
落ち込む私を見兼ねて声を掛けてくれた。
「う、うぅん・・・」
「そう落ち込むなって!」
(私が慰められてどうするのよ・・・)
今までもこんなように、傷付たことがあったかもしれない。
もちろん、私だって傷付くことはある。
その痛みだって知っている。
「・・・じゃ、ちょっと聞いてくれる?」
余りの落ち込みに、彼が何か話そうとしてくれた。
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