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2010年3月

[No.153-1]その先にあるもの

No.153-1

私はあることで季節の移り変わりを感じる。
毎日、少しずつ、それは変わって行く。

「気温のこと?」
「違うよ」
「服装・・・?」
「違う・・・今、見てるじゃない?」

夏帆(かほ)が、周辺を見渡し始めた。
その時点で既にハズレていると分かる。

「“冷麺始めました!”・・・とか?」
「それ多分剥がし忘れ・・・今、春前だし」

冗談なら、なかなか笑える。
本気なら笑えない。

「気付かない?今、6時半よ」
「・・・あっ!明るい?」

少し前なら、6時ではとっくに真っ暗だ。

「そう言うことね」

昼が長くなった・・・と、言えばいいのだろうか。
とにかく、日ごとに明るくなって来ている。

「言うなれば、この明るさで移り変わりを感じてるんだ?」
「そっ!でも、それだけじゃ不十分」

その先に本当の答えがある。

(No.153-2へ続く)

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[No.152-2]偶然の再会

No.152-2

「想い出の店?」
「入ったことはないんだけど・・・」

ケータイのデータフォルダにある写メが残っている。
その時のメールは消してしまったが内容は覚えている。

「当時、彼からメールもらって」

彼がその喫茶店で一息付いている時にメールが来た。

『今、一服中。それと大きな松ぼっくりを見つけたぞ』

        090127_165301

「松ぼっくり?」
「うん、良くわかんないけど、飾ってあったみたい」
「それで?」
「・・・うん・・・何となく印象に残ってるんだ」

そのメールには、場所も書いてあった。
だから、あの店に間違いない。

「じゃあ、これから行ってみる?」

展開が予想できたものの、やはり返事に困る。

「・・・ありがとう・・・でも・・・行かない」
「そっか、りょーかい!」

そこに辛い想い出があるとか、そんなんじゃない。
偶然に再会した・・・ただ、それだけだ。

「もう、二度とあ・え・な・い・・・かもよ?」
「最初から、そのつもりよ」
「ふーん・・・その言葉、意味深だよね」

今も昔も、迷ってばかりの私だ。
けど、振返らない・・・そう決めている。

(No.152完)

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[No.152-1]偶然の再会

No.152-1

(・・・あれ?・・・ここさっきも通った・・・よね?)

状況を冷静に分析してみた。
今の自分は間違いなく“迷子”になっている。

「子供じゃあるまいし」

余りの情けなさに、つい口に出てしまった。
ただ、すぐに訂正する気にもなった。

「子供以下かも・・・」

いい歳をした大人が迷子になっている。
今時の子供の方が、もっと頼りになるのかもしれない。

(約束の時間が迫ってるのに!)

「・・・そうだぁ!」

待ち合わせの相手に電話した。

「ごめん・・・迷子になっちゃってぇ・・・」
「う、うん・・・分かった目印ね・・・ちょっと待って・・・」

友人の言葉に従い、大急ぎで辺りを見回す。

(えっ・・・と、目印、目印・・・)

「あれ?」
「・・・ごめん、ごめん・・・こっちのセリフ」

目線の先に、喫茶店がある。
ごく普通の店だけど、名前に覚えがある。

「・・・うん、そう・・・喫茶店・・・分かった、そこを右ね」

その店が気になりつつも、友達の元へ急いだ。

(No.152-2へ続く)

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ホタル通信 No.015

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.93 無くならないもの
実話度:★★★☆☆(60%)

先に、結論・・・事実を書いておきますが、前半はほぼ100%実話になり、逆に後半は創作になります。

男性達の会話で、よく耳にする話があります。
「100円ライターは無くならないのに、ちょっと値の張るライターは知らぬ間に無くなる」・・・なんとなく、分かるような気がします。
高校卒業後、引越しは片手程度しているのですが、その度に無くしたり、捨てたりするものがあります。掲載の通り、気付いてみれば、私の回りには新参者が溢れていました。
結局ブラシは意地悪じゃないにせよ、新しいのを購入する目的で捨ててしまいました

物に心はない・・・。
科学的な立場言えば、これを否定する人は居ないと思います。
ただ、長年使ったものに、何らかの想いを持つことは良くあることだと思います。
楽しい時、苦しい時・・・大袈裟ですが共に歩んできた仲間のような感覚を持っていました。卒業後は家族の元を離れて、生活していましたので、それこそ「私を知るもの」は、唯一このピンクのブラシだったのです。そんなブラシを、ある日捨ててしまったのです。

ちょっとした後悔は、後半の創作に活かしました。
後半もブラシや「物」の話になっているように見えますが、ここでは「者(もの)=人」を意識して書いています。
例えば友達と何らかの理由で疎遠になったり、仲直りしたいのに言えずに居る・・・そんなイメージです。物と者をオーバーラップさせ最後に「失くさない=失わないで」欲しい・・・と結びました。

皆さんの身の回りにも、そんな「もの」はありませんか?
触れたり、声を掛けてみたり、温もりを伝え、そして感じてください。

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[No.151-2]ケース・バイ・ケース

No.151-2

「そうやって、いつも逃げてばかりいるよぉ?」

結論を先延ばしした結果がこれだ。
何も決まらないまま、旅立ちの日を迎えた。

「・・・ごめん、そんなつもりじゃ・・・」
「私だって・・・」
「もっと早く、口にしてたら良かった」

彼の責任ばかりじゃない。
私だって、その言葉に甘えていた。
・・・と言うよりも、結論が怖かったのかもしれない。
先延ばしのツケが、一番大切な時に回ってきた。

「・・・もう、時間だよ」

列車の到着を知らせるアナンスが流れ始めた。

「もう、行かなきゃ・・・」

彼に言ったようで、自分に言ったようなニュアンスになった。

「待てよ!」
彼が私の腕を掴み、そのまま抱き寄せた。
「乗り遅れるよ?」
「いいんだ・・・こんな時こそ、使わなきゃいけないんだ」

これを最後に彼の口から、その言葉を聞くことはなくなった。

(No.151完)

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[No.151-1]ケース・バイ・ケース

No.151-1

「じゃあ、ケースバイケースって、ことで」
「・・・・」
「どうした?・・・黙って」

世の中には便利な言葉がある。
そのひとつが、ケースバイケースだ。
杓子定規ではなく、その時々で最善を尽くすことだ。

「いつもそうだよね?」
「なんだよ・・・やぶからぼうに」

確かに聞こえは良い。
ただ、いつも言葉の意味を履き違えているように思う。

「で、どうするわけ?」
「だ・か・ら、ケースバイケェ・・・」
「逃げてる!」

彼の言葉を遮った。
私の気迫に、彼も面食らっている。

ケースバイケースなんて結局、結論を先送りしてるだけだ。
実際にそんな場面に直面したら、結論なんて出やしない。

「今・・・私は今、聞きたいの!」

彼は春からキャンパス生活が始まる。
そして、そこから私達の遠距離恋愛も始まる。

(No.151-2へ続く)

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[No.150-2]謎のオーケストラ

No.150-2

それから、ちょくちょくブログへお邪魔するようになった。

いつ見ても、その存在感には圧倒される。
それに、話の展開が上手い。
案外、奇抜とも思える言い回しに目を奪われがちだ。
けど、流れるような展開に全くストレスを感じない。

「おもちゃ箱、訂正しないといけないかも」

にぎやかさを、散らかしたおもちゃに例えてみた。
ただ、何度か訪問している内に、少し印象が変わった。

(・・・メロディ・・・リズム・・・ハーモニー・・・?)

「音楽的なセンスかな?」

そしてブログを構成するパーツたち・・・。

(そうか!)

「オーケストラだ!」

写真、文字の色や大きささえも、独特の音色を奏でている。
それらがまとまって、壮大な楽曲を構成する。

「楽譜と言えばいいかな?」

このブログのひとつひとつの記事はまさしく楽譜なんだ。
諧謔曲のようにユーモラスで、狂想曲のように気まぐれだ。

そして・・・。
時に、夜想曲のような、悲しげなメロディも彼女らしい。
その楽譜は、たった一夜だけ公開されたこともあった。
そんなオーケストラをまとめるは・・・そう、もちろん彼女だ。
絶妙な加減で指揮棒を振る。

「それに・・・感じる・・・」

今も、なお鳴り止まぬ拍手が私の心に響いてきた。

(No.150完)

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[No.150-1]謎のオーケストラ

No.150-1

「なんだろう、この気になる感は・・・」

自分のブログに設置している掲示板のメッセージをたどった。
トップページが印象的な、とあるブログへリンクした。

「この絵、手書き・・・?」

CG全盛の中にあって、逆に新鮮な絵が私を迎えてくれた。

「なんだか、懐かしく感じる絵だな」

それに温かみも感じる。
だから、気になるのだろうか。

(・・・で、内容は・・・エッ!)

独特の言い回しがかなり衝撃的だ。
でも、それが自分の世界観を上手く表現している。
その世界に、グイグイ引き込まれて行く。

文字の大きさ、色、写真・・・それぞれのパーツが踊っている。

(いや・・・どちらかと言えば)

「おもちゃ箱をひっくり返したような、にぎやかさだな」

そこにも、あそこにも魅力あるおもちゃが転がっている。
それをひとつひとつ手に取って感じてみる。

「・・・これはワクワクする・・・これもそうだな・・・これは?」

その中には壊れかけたおもちゃも混じっているようだ。
でも、それを隠そうとはしていない。
そのおもちゃも、大切に抱きかかえている。
心の叫び・・・自分のブログに通じるものを感じる。

「それにしても、色々な意味で強烈なブログだな」

久しぶりに楽しい時間を過ごした。
一緒になって、おもちゃで遊んだような気分だ。

(No.150-2へ続く)

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ホタル通信 No.014

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.112 願い事~鈴虫寺から~
実話度:★★★☆☆(60%)

実際に鈴虫寺に行って、とあるミスをしてしまったことがきっかけです。その“とあるミス”から話しを進めます。

掲載の通り、ここのお地蔵様は住所を頼りに願い事を叶えに来てくれるそうです。私もそれにならって住所を心の中で唱えたのですが、変に緊張し、住所を間違えると言う失態をしてしまいました
正確に言えば、部屋番号を唱えるのを忘れたため、建物には辿り着いたものの、お地蔵様は迷われたと思います・・・「どの部屋なんだろうか?」と。

サクッ!と言っちゃいますが、牽引役の彼女のお願い事は「亡くなった彼にもう一度逢いたい」です。
その願い事は、隣に住む人へ“彼氏とヨリが戻った”と言うの形で叶ったかのように見せています。もちろん、単なる偶然かもしれません。
文末の「わざとなのか、天然なのか・・・」の部分ですが、現実の私は“天然”でした。前述通り、なぜかしら緊張していました。
恥ずかしい話ですが、それだけ願い事が真剣だったんですぅ!
小説の彼女と同じ願い事とは言いませんが、似てると言えば似てるのかなぁ?なんて・・・。
今、私のカードケースにそのお守りが入っています。奇跡を信じてる訳じゃないけど、そんなことがあってもいいなと思います

鈴虫寺に行った後、家の近くでキョロキョロと、どこかを訪ねようとしている人を見かけたことがあります。坊主頭のその人・・・どこか
で見たような気もしますが・・・これは実話、それとも創作w(゚o゚)w

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[No.149-2]それぞれのイベント

No.149-2

「卒業式?」

帰社後、同僚にそのことを話した。

「そんな季節になったのね・・・」

何かを想い出すような口調だった。

「卒業式って、ある意味最大のイベントだよね」
「そうだけど、そうじゃないとも言える」
「どう言う意味?」
「人ぞれぞれにイベントがあるってこと」

確かに卒業式自体に何かあるわけじゃない。
それに何日前から、イベントが始まる人もいる。

「そんな経験あるんだ、で・・・した方?された方?」
「・・・した方・・・」

あの日、ずっと好きだった人に告白した。
卒業を前にして、気持ちをおさえることができなくなった。

「まさしく、人それぞれのイベントだね」
「・・・聞かないの?」
「何を?」
「・・・その結果」

何を差置いても、それを聞いてくるタイプの同僚だ。

「私が聞きたいのは結果じゃないよ」
「じゃ、何よ?」
「どうして、今は“意気地なし”なのか、ってこと」
「わ、分かったわよ・・・」

あの日、片思いは実らなかった。
けど、意気地なしじゃなかった。

(No.149完)

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[No.149-1]それぞれのイベント

No.149-1

(学生服が多い・・・)

取引先に向かう道中、学生達とよくすれ違う。
それは、ある程度、まとまった集団になっている。

「土曜日でもないのに・・・」

それに下校時間にはまだ早すぎる。

(試験中?それとも創立記念日とか?)

「あっ!そうかぁ」

良く見ると皆、筒状の物を手にしている。

「卒業式なんだぁ!」

彼らから名残惜しそうな雰囲気が伝わってくる。
歩むスピードが、それを物語っている。
想い出を踏み締めるかのように進み、時に足を止める。
まるで、次の一歩を躊躇しているようにも見える。

(分かる、分かる!)

これから進学する人、いち早く社会に飛び出す人。
いずれにせよ、若い彼らにとっては踏み出すのに勇気がいる。

(頑張れ!)

何年か前は、自分もその集団の一員だった。
彼らと同じように立ち止まり、次を一歩を踏み出せずにいた。

『このまま時が止まればいいのに』

その時ははそう思った。。

「・・・あっ!いけない・・・急がなきゃ!」

気付けば、取引先との約束の時間が迫っていた。

(No.149-2へ続く)

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[No.148-2]初恋

No.148-2

早速、ある歌詞検索サイトを訪れた。

(えっ・・・と、歌詞検索・・・歌詞検索・・・)

画面を一度スクロールさせ、全体を確認する。
その時、何かを感じた。

「これ・・・この歌かも知れない」

あるアーティストの写真と曲名が掲載されていた。
なぜだか直感的にそう感じる。
ドキドキしながら、“歌詞を見る”をクリックした。

断片的な歌詞が一致している。
同じように断片的なメロディに乗せ、歌詞を読んだ。

♪『桜並木を歩いて・・・見上げて・・・雪の日も・・・
       で・・・しないから 隣り・・・しないから』♪

ピッタリあてはまる・・・桜並木、そして繰り返される“から”。
大急ぎで、この曲を視聴できるサイトを探した。

後日、友人に今までの経過を話した。

「すごいじゃない!それだけでよく見つけたわね」

あれから視聴できるサイトで確認した。
間違いなく、あの日聞いた曲だった。

「それにしても、タイトル・・・」
「そうね、深い・・・ね」
「歌詞のような経験ある?」
「うーん・・・女子なら少なからず、あるんじゃない?」
「・・・だよね」

友人と別れ、帰りの電車の中でその曲を聴いた。
音楽プレーヤーにアーティスト名と曲名が表示されている。

~奥華子 初恋~

(No.148完)

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[No.148-1]初恋

No.148-1

特に目的もなく街をブラブラしている時だった。

♪『・・・桜並木・・・しないから・・・から・・・』♪

有線放送だろうか?
雑踏を縫うかのよう、断片的に聞こえてきた。

(誰だろう・・・?)

初めて行く曲で、歌声に聞き覚えもない。
立ち止まって耳を澄ませてみる。
でも、ほどなく曲が終ってしまった。

「・・・なんだろう・・・この気持ち・・・」

かなり断片的だけど、歌詞とメロディを覚えている。
心に残る曲は多い。
でも、今回のこの気持ちは今までにない感覚だ。

幼さが残る歌声だったような気がする。
純粋と言うより、真っ直ぐな、せつなさを感じた。

(・・・そんな!)

余韻を感じている最中に、次の曲に変わってしまった。
アーティストの名前も曲名すら、分からずじまいだ。

(知りたい!)

このまま知らずにいると、もう二度と出逢えない気がした。

「調べてみよう」

今はネット社会だ。
鼻歌からでも曲を検索できる。

(きっと何とかなる)

断片的な歌詞とメロディから、それを探すことにした。

(No.148-2へ続く)

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ホタル通信 No.013

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.03 過去へのゴミ箱
実話度:☆☆☆☆☆(0%)

今となっては、「No.01 グリーティングカード」と共に、現ブログの主旨から外れる、ファンタジー色の濃い作品です

ブログを始めた頃は特にテーマやジャンルを意識せずに何でも書くつもりでした。ただ、あからさまに日常から外れる話は考えていませんでした。

一読すると、紙の塊が未来のゴミ箱から過去の試験会場へとタイムトラベルしているように読み取れます。真相・・・なんですが・・・その読み通り、タイムトラベルを意識させようと明らかに書いていました。
その中で「待てよ・・・もしかしたら・・・」の含みを持たせるため何かと中途半端な経過と結論にしています。
今、改めて自分で読み直して、非現実的な部分が現実的にならないかと、後日談と言うか・・・続きを書いておきます。


「さっきは、何、ボケッとしてたのよ?」
「あのね・・・」

亜紀にあの不思議な体験を話した。

「A商事の入社試験のことね」
「うん、そう・・・えっ!何で会社の名前知ってる?」
「その日、私も受けてたの」
「そしたら、陽子が浮かない顔だったから」
「見兼ねて?それで・・・」

もちろん当時はお互い知らない者どうしだ。

「まぁ、二人共、結局ダメで」
「何の因果か、あんたの夢に付き合うはめになったけどね」

亜紀とは、あの試験後に出逢った。
偶然と言うか、今思えば、必然と言うか・・・。

「着いたわよ」

会議が終ってから、ゴミ箱の中を確認した。
さっき投げた紙の切れ端が入っていた。

「・・・だよね・・・」

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[No.147-2]凸凹コンビ

No.147-2

「俺、内面的に女性っぽい所があるんだ」
「そんな趣味があったんだ・・・」
「や、や・・・そっちじゃなくて!」

冗談で答えたつもりなのに本気で否定している。

「分かってるわよ、何かと丁寧だもんね」

弱々しいとか、いわゆる“草食系男子”ではない。

「逆に私なんか、男っぽいでしょ?」

彼が黙って首を縦に振る。
既に、この段階で男女の立場が逆転したような光景だ。

「俺の中の“女性”が・・・」
「私の中の“男性”を好きになった・・・でしょ?」

彼の言いたいことが良く分かる。
付き合い始めて間もないけど、そんなシーンが何度かあった。

「私の中の男性もそうよ」

相性って、本当はすごい複雑なのかもしれない。

「・・・それに」

彼が続けようとしている話が予測できる。

「代わりに、私の場合を答えていい?」
彼がまた首を縦に振る。

「私の中には妻や母親、それに子供の所もあるわよ」

(No.147完)

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[No.147-1]凸凹コンビ

No.147-1

異性との相性について、少し思うことがある。

「相性って何で決まると思う?」

付き合い始めて間もない彼に想いを投げる。
相性が良い・・・広く使われる言葉だ。
お互いの立場はどうであれ、性格がよく合うということだ。

「自分はどうだったんだよ?
「私・・・?付き合ったきっかけのこと?」

上手く、はぐらかされている気がする。
でも、ヒントになるかもしれない。

「そうね・・・弟みたいなとこかな?」

事実、彼のほうが年下だ。
やんちゃで、ほっとけないタイプ。

「俺は反対に姉貴のような所が好きだしな」
「へぇー初めて聞いたけど?」
「まぁ・・・そう言うことだから」

照れる表情が、ますます弟っぽい。

「ありがとうね」
「あぁ・・・」

しばらく心地よい沈黙が続いた。
言葉は要らない・・・そんな空気が私たちを包んでくれた。

「それと、他にもあるんだ」

(他にも・・・理由が、ってこと?)

(No.147-2へ続く)

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[No.146-2]月を恐れぬ女

No.146-2

「そぉれならぁ、みかづきをくれてやるわぁよぉ」

酔いも手伝って、完全にオヤジ口調だ。
それに、できやしないことまで口にしている。

「ハイ、ハイ!ありが・・・とう・・・」

適当にあしらおうと思ったのに、また彼女の目が光った。
それに、ニヤリと不敵な笑みも浮かべている。

「うそぉだとぉ思ってぇるぅでしょお~?」
「もちろんよ」

それにしても彼女の酒癖がこんなに悪いとは・・・。
やはり、満月のせいなのかもしれない。

「ちょっとぉ、こっちぃきて!」
彼女が強引に私の腕を掴んで引っ張る。
「ど、どこ連れていくのよ!」
その時だった。
「おりゃぁー!」
氷った水たまりを踏んづけた。
「これでどう?」
水たまりが割れ、その何枚かを手にとった。
「・・・確かに」

氷に映りこんだ満月が三日月のように欠けて見える。
それ以来、彼女はこう呼ばれるようになった。
“月を恐れぬ女”と・・・。

(No.146完)

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[No.146-1]月を恐れぬ女

No.146-1

「今日ぉわぁ、満月なんだぁねぇ~」

飲み会の帰り、同僚が夜空を指差した。
かなり、ろれつが回っていない。
女性だけの集まりだったこともある。

街中に居ると、月の光を感じることが少ない。
誰かが言わない限り、夜空を見上げることもない。
気付けば、満月は神々しい位に、私たちを照らしていた。

「結構、明るいよね」

夜空とのコントラストがはっきりしている。
真っ暗闇に、ポカンと穴が空いたようにも見える。

「満月の夜は・・・だよね」

誰かがポツリとつぶやく。
満月の夜は何かが起こりやすいとも言われる。
確か、月の引力がどうのこうの・・・。

「なぁ~に、たたずぅんでるぅのよおぉ~」
「ちょ、ちょっと、からまないでよ!」

なるほど・・・今夜は彼女に何かが起こっている。

「私はね、三日月の方が好きなの!」
「みぃかぁづきぃー?」

そう答えると、彼女の目がキラリと光った。

(No.146-2へ続く)

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ホタル通信 No.012

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.114 友達以上恋人未満
実話度:★☆☆☆☆(20%)

実際には、このような存在以上に微妙な関係の人が居たことがきっかけです。それを世間でよく言われる、友達以上・・・に話をすり替えました。

特にシリーズにはしていませんが、格言・名言などをテーマにした話を書くことがあります。その中でも恋愛関連は強敵だと感じています。
事実、テーマに取り上げてみたものの、いつもの通り、結末が見えないまま話を作って行きました。

最初のイメージでは、友達以上恋人未満と言う、つかみどころがない部分をせつなく書くつもりだったのですが、美代のキャラ設定が軽すぎて、それなら・・・と、コメディタッチで話を進めて、結末を探りました。
その後、幸運にも「友達以上」を「友達未満」と打ち間違えてしまい、今のアイデアを思い付きました
友達未満なんて、現実ではとても笑えたものではありません。ですから、あくまでも小説の話として笑ってあげてください。

ただ、近々発表する小説に似たような話が登場します。
直接それに触れる話ではありませんが、友達未満のひとつの答えに気付くはずでしょう。
まさか、適当に創作した小説の答えに時を越えて出逢うことになろうとは思いもよりませんでした
では、「No.148 初恋(仮称)」でお待ちしております。

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[No.145-2]出逢いは別れの始まり

No.145-2

「でも、名言がネガティブ・・・ってのもどうかな?」

忠告や苦言であっても、踏み出す勇気を与えてくれる。
それが名言だと思う。

「じゃ、良い所、見つけない?」
「そうね!」
「レッツ、シンキング・タァイムゥ!」

それから、お互いしばらく考え込んだ。

「・・・どう?」

先に声を掛けてきたのは君枝のほうだった。

「うん・・・」
「君枝はどうなのよ?」
「わたしぃ?」

どうやら、私たちでは気の利いた結論は出ないようだ。

「まぁ、充実した時を過ごしなさいってことだよね?」
「別れが来るまで・・・と言うことね?」

何気なく言い放った二人の言葉が妙にしっくりきた。

出逢いは別れの始まり・・・。
別れと言う“ゼロ”向かって、カウンドダウンを始める。
そして、ゼロになった時・・・。

「・・・どうなるの?」
「充実した思い出と言う“無限大”に向かって・・・」
「永遠にカウントアップを始めるのね」

(No.145完)

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[No.145-1]出逢いは別れの始まり

No.145-1

世界においても間違いなくベスト3に入る名言がある。
出逢いは別れの始まり・・・。

「世界・・・って、外国も同じ表現するの?」
(ギクッ!)
君枝が痛い所を付いてくる。

「それだけ、名言だってことなの!」

実際、調べてみたことはない。
それを突き詰めることに意味を見出せないからだ。
素直にそれを受け入れたい。

「で、その名言がどうしたって?」
「・・・別に・・・その・・・特に・・・なし」

自分が言い出しておいて、急にテンションが下がる。

「なーんだぁ・・・面白い話が聞けると思ったのにぃ」
「面白いって・・・この流れなら・・・」
「私は面白くっても、あなたは面白くないわね」

それにしても、ふと思ったことがある。

「この名言って、ポジティブ?それともネガティブなのかな?」

どんな形であろうが、誰もが別れを避けて通れない。
だから、諦めなさい・・・とでも言ってるのだろうか?

「そうね・・・なんとなくマイナスイメージがあるよね」

出逢いに臆病になる。
それに大きく関係してくる。

(No.145-2へ続く)

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[No.144-2]彼の傷

No.144-2

「知っての通り、僕の人生はお世辞にも幸せじゃない」
「子供心に、随分傷付いたしね」

彼の瞳が遠い過去を見ている。

「でも・・・」
「そんな僕でさえ、誰かを傷付けてると思う」
「知らず知らずのうちに」

「ねぇ、今度は私が聞いていい?」
「なに?」
「どうして、そんなに強いの?」

痩せ我慢ではない・・・穏やかさの中に、強さを感じる。
本当は傷だらけのはずなのに・・・。

「強い・・・?僕が?」

彼がキョトンとした顔をした。
けど、すぐさま大笑いに変わった。

「もぉ!笑わないでよぉ!」
「ごめん、ごめん、考えてもみなかったよ」
「と・に・か・く・・・ごめんね」

もう一度、彼に謝った。

「どれがどの傷か、もう覚えてないよ・・・多すぎてね」

呼吸を整えるかのように、静かに微笑んでくれた。

(No.144完)

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[No.144-1]彼の傷

No.144-1

心は傷付きやすい。
・・・なのに知らず知らずのうちに、傷付けてしまう。

「ごめん、知らなかったの」

広く世間の話題を口にしたつもりだった。
けど、それが偶然、彼の生い立ちと重なった。
知らなかったとは言え、彼を傷付けてしまった。

「気にするなよ」

彼は笑顔で応えてくれた。
その言葉に嘘はないと思う。
ただ、想い出させてしまったことには間違いない。

「本当に大丈夫だから」

落ち込む私を見兼ねて声を掛けてくれた。

「う、うぅん・・・」
「そう落ち込むなって!」

(私が慰められてどうするのよ・・・)

今までもこんなように、傷付たことがあったかもしれない。
もちろん、私だって傷付くことはある。
その痛みだって知っている。

「・・・じゃ、ちょっと聞いてくれる?」

余りの落ち込みに、彼が何か話そうとしてくれた。

(No144-2へ続く)

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