[No.139-1]今年のバレンタイン
No.139-1
『ごめんなさい』
ある男性社員にメールを送った。
日頃から何かと相談に乗ってくれる会社の先輩だ。
それ以上でもそれ以下でもない。
「多分、意味分かんないだろうなぁ・・・」
そう思いながらも、こう書かずにはいられなかった。
案の定、彼から返信があった。
『思い当たるふしがないけど・・・何かあった?』
2月14日・・・バレンタインデー。
義理以上、本命以下のチョコを渡す予定でいた。
彼は貰えることは知らない。
なぜなら、今回が初めてだからだ。
だから、本当は謝る必要はない。
逆に謝ったほうが余計に話しをややこしくするだけだ。
『バレンタインのチョコ、渡せないの』
『ごめん・・・事態を把握できていない』
無理も無い。
渡す約束はしてないし、そんな素振りも見せていなかった。
『チョコ、渡すつもりでいたの』
今までより少し間を置いてから返信があった。
『そっか・・・ありがとう』
今でも事態を飲み込めていないと思う。
それなのに、返信する言葉を選んでくれたんだろう。
数日前、知り合いに不幸があった。
だから、バレンタインに浮かれることができなかった。
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