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2010年2月

ホタル通信 No.011

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.81 風を感じて
実話度:☆☆☆☆☆(0%)

今でもたまに書くタイプの小説です。あるテーマを題材にする時に、そのとっかかりを間接的に書くことがあります。

この話は結末を先に書き、そこに色付けしていきました。タイトル通り“風を感じて”書いたので実話とも言えるのですが、そこから広がる話は完全に創作です。
風をテーマにしたのなら風が特徴的な場所・・・とにかく室外が基本になりそうですが、意外な場所からスタートさせました。

風を感じて・・・。
感じて終るのではなく、「この風はどこから来たの?」「誰かのために風を起こそう!」と。
誰かが誰かのために・・・そんな想いで書いたはずなのに本当は自分自身に向けた想いだったのかもしれません。
いきなり風そのものから書き始めると、ストレートすぎるので、一旦「絵」で含みを持たせて、そのモヤモヤ感を後半一気に放出させました。

季節を通して、風は吹く。そして今日も風は吹いていました。

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[No.143-2]大きなお菓子

No.143-2

「へぇ~、ハンズってお菓子売ってたんだ」

店舗や時期によっても違うだろうが、確かに売っている。
よく見れば、見覚えのある駄菓子ばかりだ。

「懐かしいな、よく食べてたよ!菜緒はどうだっ・・・?」

(あれ?居ない・・・あぁ!)

エスカレータで上がって行く菜緒の姿がチラッと見えた。
慌てて菜緒の後を追った。

「ハァハァ・・・お菓子は1階だよ?」
「そのお菓子と違うねん、これ見てん!」

菜緒が商品の棚を指差す。
(・・・あぁ、なるほどね・・・)
そこには本物そっくりの、おもちゃのお菓子が飾ってあった。
大きさは本物よりも少し小さいようだ。

「で、部屋に飾るの?」
「食べるんよ」
「な~んだ、食べるんだぁあぁ!?」

冗談とは言え、声が上ずってしまった。

「もちろん、うちは食べへんけどな」
(・・・と言うことは)
「もしかして、俺が食・・・」
「せいじゅうろう達に決まってるやろ」
「だよなぁ~!」

俺たちには小さくても、彼らには大きいお菓子。
いや・・・大きすぎるかもな。

(No.143完)

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[No.143-1]大きなお菓子

No.143-1 [No.07-1]せいじゅうろう

『お菓子買いに行かへん?』

菜緒からメールが入った。
断る理由もないので、とりあえず返事を出しておいた。
でも、何だろう・・・。

「バレンタインデーには早い・・・よな?」

それなら『チョコを・・・』になるはずだ。
一緒に行くのだから、隠す必要もない。

(まぁ、単純にメールの通りだろう)

そんなに悩むことでもない。
ただ、今までからすると・・・何か・・・ある、きっと。
ここはひとつ、ジャブを打っておくとしよう。

『ところで、どんなお菓子を買うの?』
『そうやな、決めてへんけど』

(・・・ほら!いつものパターンだ)

『丁度いい、サイズあったら、それにする』

(丁度いいサイズって?)

誰の?俺のぉ?・・・それとも菜緒のだろうか・・・。
ますます、いつもの展開になってきた。

『ほな、明日、東急ハンズで』

(東急ハンズ・・・??)

とどめを刺された気分だ。

(No.143-2へ続く)

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[No.142-2]人は変われる

No.142-2

それからと言うもの、直(ナオ)は意識し始めた。
でも、行動を変えただけでは、変わったことにはならない。
直もそれに気付いていた。

人は、そう簡単には変われない。
それでも、変わろうと必死になって生きている。

そんな時だった。

「私って変わった?」

直が改めて僕に問い掛けて来た。

「前と変わらない・・・」

うそは付けない。

「・・・簡単には変われない、ってことね」
「違うよ」
「違う?」

直にとっては矛盾した答えになるはずだ。
(でも、違うんだ)
「直を見ていると、僕が変わった・・・変われたんだ」

そうしたら、直が別人に見えた。

「変わらなきゃいけないのは、僕らなのかもしれない」

(No.142完)

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[No.142-1]人は変われる

No.142-1

「顔に何か付いてるの・・・?」

直(ナオ)が、怪訝そうな顔をする。

「あっ!ごめん、違うんだ・・・」

目の前で、はしゃぐ直を、マジマジと見つめてしまった。
昔に比べると、彼女は随分と変わった。

そう・・・あの頃に比べると・・・。

「人って変われるのかな?」

直が真剣な眼差しで、僕に話しかけてきた。
“変われる”と言うより“変わりたい”のだろう。

「変われると思う・・・難しいけどな」

理想を話しても仕方がない。
直もそんな答えは期待していないはずだ。

「そうね、すぐ変われたらこんなに苦労しないよね」

笑顔がやけに痛々しく感じる。

「でも、意識することから始まるよ」
「うん!そうしてみる」

人は変われる・・・結末は意外な方向へ進んだ。

(No.142-2へ続く)

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ホタル通信 No.010

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.69 カウンターパンチ
実話度:★★☆☆☆(40%)

小説のヒントとなったものは、実はボクシングではありません。

冒頭の会話のように実際、飲み会の席があり、昔話に花が咲いた事実を切り取ってみました。昔話の内容は事実とは相違があります。
入社当時はまだ学生の延長線上にいますので、語られる話も恋バナを中心として、ボクシング風に展開させてみました。
結末に関しては完全にノーアイデアで、ラウンドを進めて行くうちに、実は作者がどんどん追い詰められていきました

そんな時、「ここだけの話だけど」とか「実は当時ね・・・」などの「今だから言える話」で話が展開して行くことを思い出し、結末を決めないまま、書き続けました
その結果、ちょっとブラックジョーク的な結末で話を終らせることができそうになり、それを改めてボクシング的にまとめてみました。カウンターパンチは必然的に繰り出されたパンチです。
そこで、もう一度全体のレイアウトを変更し、それらしい色を濃くしてみました。

通常、タイトルは早く決まることが多いなかで、この話は最後の一文を書き終えるまで、決まりませんでした。
ただ、書き終えた瞬間「これしかない!」とも思えるほど、内容とタイトルが調和できたかな?と、手前味噌ですが感じています。
冬のホタルでは実話をヒントにして、創作を織り交ぜた、ハイブリッドな小説が特長です。
でも、小説になりそうな派手な実話よりも、何気ない会話にこそ小説のヒントがあると思っています。

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[No.141-2]男女の友情

No.141-2

「女性は少なくともそう思っている・・・“存在する”とね」
「女性は・・・?」

智久が重要な部分に気付いた。

「・・・じゃ、男性はどうなんだよ?」
「存在しないと思ってるでしょ?本当は智久も」

友達、恋人、結婚相手・・・女性はそれぞれに境界線が引ける。
大好きなアイドルが居ても、それはそんな存在でしかない。
結婚しようとか、したいとか・・・飛躍はしない。

「男性は違うでしょ?」
「そ、そう言われると・・・否定できないな」

一方、男性にその境界線はない。
好きなアイドルイコール「結婚したい!」と思うことも少ないはずだ。

「女性から見れば友情は成立する」
「男性から見れば成立しない・・・か」

智久も妙に納得した表情だ。

「がっかりした?」
「・・・かもな」
「でも、男女の友情を壊すのは男性ってことでしょ?」

友情が壊れたら、恋人に発展することだってある。
「だから、勇気を出してよ」

(No.141完)

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[No.141-1]男女の友情

No.141

「智久はどう思う?」

“男女に友情は存在するか”
とあるテレビ番組で、タレント達がトークを繰り広げていた。

「存在しないんじゃない?」

智久があっさり答えた。

「・・・いや、その、あれだ・・・」

答えた途端、急にあたふたし始めた。
理由は想像が付く。

「私に気をつかったんでしょ?」

智久と私は幼なじみだ。
大学に進学した後も、友達として頻繁に逢っている。
“存在しない”は、ある意味問題発言だ。
私のことを“女”として見ていることになるからだ。

「一般論としてだよ、俺の意見じゃない」
「それより、おまえはどうなんだよ?」
「私?」

(智久には悪いけど・・・)

「存在すると思うけどな」

丁度、テレビでは“存在しない”と結論付けられていた。

(No.141-2へ続く)

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[No.140-2]誰をダマしたの?

No.140-2

美代がある話をしてくれた。
テレビドラマは自分がモチーフじゃない限り、他人の話だ。
でも“あいつ”は、他人と自分の区別が付かないと言う。

「あいつ?」
「そう!あ・い・つ」

(誰・・・あいつって?)

「失恋して泣いたらスッキリしたよね?」
「もぉ!ダメ押ししないでよ」
「じゃ、ドラマで他人の失恋シーンを見たらどう?」

最近、丁度そのようなドラマを見た。
自分と重なったこともあって、思い切り泣けた。

「スッキリ・・・した・・・けど」
「それ、騙してるんだよ」
「騙している?」

話が見えない。

あいつ・・・騙している・・・なんのことだろう。
ドラマの役者にでも騙されていると言いたいのだろうか?

「スッキリしたければ、涙を流す・・・」

美代が核心を話し始めた。

「他人の話でもスッキリするのは“あいつ”を騙してるから」
「だから、誰・・・“あいつ”って?」
「ここよ・・・」

美代が自分の頭を指差した。

「頭・・・脳ってこと?」

半信半疑だったが、気になり調べてみた。
事実、脳は他人と自分の経験の区別はつきにくいらしい。

(No.140完)

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[No.140-1]誰をダマしたの?

No.140-1

『なんでかな?涙を流すとスッキリするよね』
とある女子高生のセリフだった。
(・・・なんでだろう?)
心の中でそれに反応した。
そのセリフを最後に、映画は終了した。

「涙を流すとスッキリするよね!」

美代が映画と同じセリフを言った。

(そうなんだけど・・・)

今まで何度も経験している。
でも、今回ばかりは経験が物を言わない。

「じゃ、ちょっと失礼して」

美代が突然、変顔を披露し始めた。

「プっ!ちょ、ちょっとやめてよぉー」

笑いのツボに入ってしまったせいで、笑いが止まらない。
笑いすぎて涙まで出てきてしまった。

「どう?スッキリした」
「したけど・・・それより」
「それより?」
「顔、気持ち悪い!」

美代には冗談で返したが、確かにスッキリする。

「悲しい涙ならどうなのかな」
「それなら、1年前はどうだったのよ?」

(1年前・・・!?)

「まぁ、ねぇ・・・スッキリしたけど」

今度は悲しみのツボを突かれた。
彼と別れた時、大泣きしたことを知っているからだ。

「ねぇ、知ってる?こんな話・・・」

(No.140-2へ続く)

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ホタル通信 No.009

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.18 無難なお土産
実話度:★★★★★(100%)

小説にはならないような話を小説化してしまう・・・冬のホタルの醍醐味のような作品です。ちくわをお土産に貰ったことはありますか

お土産を渡す相手にもよりますが、まず、ちくわ自体がその土地の名産でもない限り「なんで、ちくわなの?」と疑問が先に湧いてくると思います。
登場する男性は「ちくわ好き」なので、結果オーライになっていますが、普通はちょっと驚くと思います。
でも、適当に選んでいない・・・そんな気持ちが伝わればどんなお土産でも嬉しいものです。麻奈がなぜ、ちくわを選んだのか・・・もしかしたら、今までの会話の中で、知っていたのかも知れませんよね

単にちくわを貰っただけなら、多分、小説にしなかったと思います。
タイトルの通り、「無難なお土産」として貰ったことが、ポイントになっています。大阪弁調で言えば「どこが無難やねん!」と一斉に突っ込まれそうです。
麻奈は別にウケを狙ったわけではなく、純粋に選んでくれました。何がそれを選ばせたのか分からないものの、彼女にとってはそれが無難だと思ったのでしょう・・・そこが笑える所であり、その純粋さが胸に響いてきます。
ただ、真夏のちくわ・・・食べるのに勇気が必要ですね。

お土産選びはセンスが問われる・・・冒頭に書いたとおりです。
あなたは枚数それとも値段・・・それとも話題性でお土産を選びますか?その前に私はどうかって・・・?
もちろん「無難なお土産」を選びますよ。無難な・・・ね

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[No.139-2]今年のバレンタイン

No.139-2

彼にそのことは話していた。

『ごめんね』
『さすがに、そんな気分には、なれないだろ?』

彼の気遣いが嬉しかった。
本当なら変な意味ではなく、喜んでもらえたかもしれない。
純粋に喜ぶ顔が見たかった。

『言わなきゃわかんないのに』

(そうだよね・・・)

あえて言ってしまえば気まずくなる。
言わなければ、もっと気まずくなると思った。
でも、言って良かった。
彼なら分かってくれる・・・そんな自信もあった。

(・・・そうだ!)

実物は渡せないけどこれなら・・・。
急いで、チョコを写メした。

『おっ!美味しそうじゃないか』

すぐに彼から返事が届いた。

『今年はこれで』
『ありがとう!逆に助かったかも』

(・・・助かった?)

『今、ダイエット中なんだよ』
『でも、続かないから、来年は多分、大丈夫だと思うよ』

来年のバレンタイン・・・。
もしかしたら、本命として渡すことになりそうだ。

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(No.139完)

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[No.139-1]今年のバレンタイン

No.139-1

『ごめんなさい』

ある男性社員にメールを送った。

日頃から何かと相談に乗ってくれる会社の先輩だ。
それ以上でもそれ以下でもない。

「多分、意味分かんないだろうなぁ・・・」

そう思いながらも、こう書かずにはいられなかった。
案の定、彼から返信があった。

『思い当たるふしがないけど・・・何かあった?』

2月14日・・・バレンタインデー。
義理以上、本命以下のチョコを渡す予定でいた。
彼は貰えることは知らない。
なぜなら、今回が初めてだからだ。
だから、本当は謝る必要はない。
逆に謝ったほうが余計に話しをややこしくするだけだ。

『バレンタインのチョコ、渡せないの』
『ごめん・・・事態を把握できていない』

無理も無い。
渡す約束はしてないし、そんな素振りも見せていなかった。

『チョコ、渡すつもりでいたの』

今までより少し間を置いてから返信があった。

『そっか・・・ありがとう』

今でも事態を飲み込めていないと思う。
それなのに、返信する言葉を選んでくれたんだろう。

数日前、知り合いに不幸があった。
だから、バレンタインに浮かれることができなかった。

(No.139-2へ続く)

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[No.138-2]心を込めて

No.138-2

“聞く”よりも“聴く”の方が、相手に対する印象が良い。
辞書的に“聴く”は身を入れてきくからだ。

「そりゃ、“聴く”の方でしょう!」

口にすればどちらも同じなのに、文字にすると違いが出る。

メールでは伝わらない。
だから、電話しましょう・・・。
世間では、そんなことがささやかれていたこともあった。

「おもう・・・と言う言葉もそうね」
「“思う”と“想う”ね!」
「あたたを“想って”います・・・って書かれたら・・・」
「グッ、と来ない?」
「好きでもない人なら、逆に『妄想はやめて!』ってなるよ」

良くも悪くも、“想う”の方がなんとなく重みがある。

「逆に、言葉で伝えるほうが大変よね」

思いではなく、想いをどう伝えたら良いのか・・・。

「それは今後の課題と言うことで!」

私たちには、今の所必要ない問題だ。

「それより、今の課題の方が・・・」
「話しの流れからすると、もしかしてアレ?」
「うん、そうね“淋しい”と・・・」
「・・・寂しい?」

男っ気のない私たちは、いったいどっちなんだろうか。

(No.138完)

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[No.138-1]心を込めて

No.138-1

使う漢字にその人の心が見える。
もちろん、その意味を分かった上での話だ。

「ねぇ、この場合、どっち?」

友人がケータイの画面を見せ、ある部分を指差した。

(・・・話しを“きく”こと・・・)

「何よ、これ?」

彼女が答える前に、もう少し前後を読んでみた。
内容からすると、相手は男性らしい。

「これ?好きになった人よ」

何のためらいもなく、友人が答える。
(そ、そうなんだ・・・)

「もしかして、本気にした?」
「嘘なの!?」
「嘘じゃないけど・・・」

真相が分かれば話が早い。
昨日、ある人の講演会に行って、感動したらしい。

「早い話、ファンレターのようなもの?」
「そうね、そんな感じ」
「で、話しを戻していい?」

(脱線させたのはあなたよ!)

「この場合は、“聞く”それとも“聴く”なのかな?」

(No.138-2へ続く)

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ホタル通信 No.008

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.26 Y
実話度:☆☆☆☆☆(0%)

アルファベットの「Y」を見て思いついた小説です。「Aならどうなんだ!」と言われると・・・

文章も時系列の表現の仕方も、まだまだ未熟な時でしたので手前味噌ですが、結末だけが唯一の救いかと思います。

皆さんは「Y」を見た時、分かれ道を想像しますか?それとも出逢う道を想像しますか?
分かれ道をイメージしたからネガティブだとか、そんなことはありません。別々の道を進んで行くことが、新しい出発でもあるからです。
逆に、出逢う道をイメージしたからといって、その先にあるものまでポジティブとも言えません。
「出逢わなければ良かった・・・」なんて、ちょっとアダルティなことが待ち構えていることもあるでしょう。
この小説では結果的に「出逢う道」をポジティブと位置付けていますが、それは牽引役である「私(女性)」がそう想っているのに過ぎません。そして、彼も同じ答えを出した・・・ただそれだけです。それに、実はこの話にはもうひとつ隠れた想いがあるのです

この小説は二人の会話で話が進みます。
それもあって、出逢ったり、別れたり・・・少なくとも二人を基準にして考えています。
これが、ひとりなら分かれ道を目にした時、「どちらに進むべきか」と悩むと思います。ひとりなら運命の分かれ道・・・と言うことになり、見方が変わります。たかが「Y」、されど「Y」・・・なんです

そう、そう!最後にもうひとつ。先ほど「どちらに進むべきか」で悩むと書きましたが、よ~く見て下さい。
見方を変えれば、仮にどちらかに進んだとしても、一本の道にまた戻ってきますよ。

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[No.137-2]熱いコーヒー

No.137-2

「あれ?上手になったじゃない」

いつもの店で、いつものコーヒーを飲んでいる。

「まあね」

前よりも慎重に飲むようになった。
私だって学習はする。

「な、なによ・・・その顔」

園子が何か言いたそうな顔をしている。

「良かったってことよ」
「何が・・・良かったのよ?」

(さっきから、何が言いたいのかな?)

「ヤケドしなくて良かったってことよ」
「それだけ?」
「それだけよ」

当たり前の話だけど、なんとなくスッキリしない。

「じゃ、また来週ね」
「そうね、ヤケドに注意するんだよ」

園子がくどいほど私に忠告してくれた意味が分かった。
私はヤケドしやすい体質らしい。
それも恋のヤケドを・・・。

(No.137完)

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[No.137-1]熱いコーヒー

No.137-1

「熱っ!」
「そりゃ、熱いわよ」

口の中に広がる熱さとは対照的に、冷めたセリフだった。

フタ付きのカップのそのフタには、小さい穴が開いている。
その穴から、おちょぼ口で飲むような格好になる。

「昭和のオーラを感じるんだけど、気のせい?」

いつまでたっても飲み慣れない。

「こうやって飲むのよ」

園子が手本を見せる。

「子供じゃないんだから・・・」

強く否定できないところが微妙だ。
普通のコーヒーカップなら、口の中に入る前に気付く。
唇が先にコーヒーの熱さを感じるからだ。
そこから慎重に飲めばいい。

「ヤケドしなかった?」
「大丈夫みたい」
「気をつけてよ、ヤケドしやすいんだから」
「・・・あ、うん・・・」

(ヤケドしやすい体質ってあるのかな?)

この時は園子の言葉の意味が分からずにいた。

(No.137-2へ続く)

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[No.136-2]太陽とクシャミ

No.136-2

悲劇のヒロイン・・・そんな気分でもいた。
それが一夜にして、普通の人に変わった。

「ホッとしたような、残念なような・・・」

複雑な心境だ。
特異体質は、“得意”体質でもある。
得意げに話せる機会もあると思っていたのに・・・。

「私もそうなんだよ」
「くしゃみ同盟?」
「ちがうよー!」

千夏が照れる様子もなく、話始めた。

「本屋?トイレ?」
「うん、行きたくなるの、それも大きい方」
「・・・」

私以上に、“得意”体質になれそうな話だ。
(羨ましい・・・じゃなくて!)

「それは大変・・・」
「そうでもないよ」

意外なほど千夏が冷静だ。
(・・・ってことは・・・)

「・・・居るの大勢?」
「調べてみたら?」

千夏と友達になれそうな人が大勢居た。

(No.136完)

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[No.136-1]太陽とクシャミ

No.136-1

ネット社会は一風変わった人の繋がりを演出する。

「それって、どこの寓話(ぐうわ)?」

千夏(ちなつ)が不思議そうな顔をした。

「北風と太陽の別バージョン?」

聞き方が現代っ子ぽい。

「ごめん!全然関係ない」

太陽とクシャミ・・・。

何のことはない・・・わたしは太陽を直視するとクシャミが出る。
特異体質だと思っていた、この瞬間までは・・・。

「そうでもないよ」
「・・・そ、そうなの!?」

あえて自分から話すことはなかった。
少なくとも、それがスタンダードではないからだ。
それがあっさり否定された。

「友達にも居るよ、そんな人」
(ひとり発見?)
「ネットで調べてみたら?」
千夏と別れた後、大急ぎで調べてみた。

「うそ・・・スタンダードじゃない」
それどころか・・・。
「なによ・・・くしゃみ同盟って?」

ひとりどころか、大勢いるらしい。

(No.136-2へ続く)

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ホタル通信 No.007

小説の舞台裏やエピソード、作者の想いを紹介します。

小説名:No.41 あの虹を越えて
実話度:★★☆☆☆(40%)

虹には、どこか神秘的な力があると思います。それを目の前にした時、人は心を開かずにはいられない・・・そんな話です。

もともと、自然現象は小説のネタになりやすく、当ブログでも度々登場します。その現象に心の中を代弁させたりします。
雨・・・沈んだ私の心、虹・・・ひとつの決意。

当時、複雑な悩みごとを持っていた時に、偶然虹を目にしたのが話しのきっかけです。目の前の虹とは対照的に、晴れることがない私の心を綴りました。
雨、そしてそれが晴れて行く・・・これだけでも小説はできたと思いますが、七色は手を差し伸べてくれる人達を連想させ、消え行くさまが明日を予感させてくれました。
その虹さえも越えて行こう・・・そんな決意さえ呼び起こしてくれました

初期の作品であり、一人称(当ブログは99.9%が一人称)なものですから、時間と他人のかかわり方が、ちょっとわかりにくいと思います
この話は少し回想を交えながら、心の中を言葉として表現してみました。

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