[No.126-2]ターミナル
No.126-2
(もう、いいよ!)
最後はこんなセリフだった。
彼女はケータイを乱暴にバッグに投げ込んだ。
その瞬間、着信音がなった。
言うまでもなく、相手が誰だか分かる。
彼女もそれを知ってか、電話には出なかった。
この日のために、オシャレしたのだろう。
服も靴も、輝いている。
唯一、彼女の表情のみが曇ったままだ。
着信音が徐々に遠くなり、それと共に彼女の姿も見えなくなった。
「あなたの想像力には感心するわ」
あの電話の女性が目の前に居る。
「ロビーの隅じゃなくて、真ん中だったけどね」
「後はだいたい当たってるわね」
あの日、急な予定が入り、彼女の元へ行けなかった。
最近の冷めかけた関係もあって、ある意味覚悟もしていた。
「どうして、そのまま別れなかったのかって、今でも思う」
「それは僕も同じだよ」
時間の経過と共に、修羅場は笑い話に変わった。
「ロビーは私達にとって、別れの場所じゃない」
「出逢いの場所・・・だったね」
あの日、それを思い出すことに、お互い時間は掛からなかった。
(No.126完)
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