[No.121-1]あなたを待つもの
No.121-1
『ご主人さまの帰りを待っているよ・・・ひとりで』
会社の同僚から、こんなメールをもらったことがあった。
送り主は、女性だ。
「おい、おい・・・このぉ、色男が!」
話の前後を上手く説明しないと、必ずこうなる。
「お疲れ様、今日も遅いの?」
廊下で彼女から声を掛けられた。
「見ての通りだよ」
時間はもう21時を過ぎている。
僕もそうだけど、彼女も十分遅い。
「そっちこそ、今、終わりだろ?」
「そうよ、じゃお先にぃ!」
(ちょ、ちょっと・・・!)
何らかの話の展開を期待したけど、意外なほどあっさりだ。
(大変でしょ?とか・・・体、大丈夫?・・・とか)
心の中の叫びとは裏腹に、彼女の背中が遠のく。
「ハァ・・・」
期待は、タメ息に変わった。
「とにかく、もう少し頑張ろう!」
机に向かい、一気に書類を仕上げようとした時だった。
『ご主人さまの帰りを待っているよ・・・ひとりで』
彼女からメールが来た。
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