[No.116-2]最高の料理
No.116-2
雪那がこのような料理を作る理由に、心当たりがある。
「早くから、一人暮らし、しててん」
「いつから?」
「高一の時からやけど」
「正確には、中退してもうたから高一とちゃうけどな」
家庭のゴタゴタもあって、そうなったらしい。
ただ、それだけでもなかった。
「まぁ、うち裕福ちゃうかったし」
自然に身に付いた、生き抜く知恵だった。
もちろん、僕に対しては健康のことも考えてくれている。
でも、雪那にとってはそんな甘いものじゃなかっただろう。
「それでも美味しいよ・・・」
以前の会話を思い出し、涙腺が緩んだ。
それに、本当に感激するほど美味しい。
「泣くほど、美味しくもないやろ」
多少の勘違いがありつつも、全部平らげた。
「これなら、男の人も喜ぶよ」
「何を使ったか、言わんかったらやろ?」
雪那が、少しおどけてみせた。
「良い奥さんになれるよ、きっと」
「そう?」
「旦那さんは、目の前の人でもええか」
僕だけが食べれる最高の料理・・・。
それと、それを作ってくれる最高の人。
(No.116完)
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