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[No.112-1]願い事~鈴虫寺から

No.112-1

何やら世間では、歴史がブームらしい。
“歴女”なる言葉も生まれた。

「・・・らしい、じゃなくて、実際そうなの!」

歴女のひとりがうるさい。
その流れとは言えないが、あるお寺の話が持ち上がった。

「願い事を叶えてくれる、お地蔵様が居るらしいよ」
「あっ!聞いたことある、確か・・・トンボじゃなくて・・・」
「それわざと?ス・ズ・ム・シよ!鈴虫寺

とにかく週末、二人で出掛けることになった。

「これが、そのお守りね」

“幸福御守”と書かれた黄色い御守。
これを両手で挟んで、お地蔵様にお願いする。

「ちゃんとしないと叶わないわよ!」
「分かってるよ、名前と住所でしょ?」

お地蔵様は何でも、住所を頼りに来るらしい。
そして、願い事を叶えてくれるとか・・・。
だから、わらじを履いているとも聞かされた。

「ねぇ、何をお願いするの?」
「・・・言えない」
「どうせ、新しい彼が欲しいとか・・・男のことでしょ?」

確かに男のことだ。
ただ、お地蔵様でも叶えるのが難しい願い事だ。

(No.112-2へ続く)

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