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[No.110-1]雨の匂い

No.110-1

単に湿気っぽいとかじゃない。
夕立が降る前に匂う、独特の雨の匂い。
夏になるとしばしば体験する。

「・・・で、なんで今頃?」

今は秋も深い。

「あ、うん、ちょっと思い出しただけ・・・」
(なんだろう、気になる)
「夕立に降られて、大変な目にあったとか?」
(ん?待てよ・・・)
自分で聞いておいて、引っ掛かりを感じた。

「まぁ、そんなものね」

そんなことはないだろう。
雨が降りそうな気配どころか、秋晴れが気持ち良い。
夕立に降られたことを思い出すシチュエーションじゃない。

「雨の匂いが分かってたなら・・・」
「そうね、避けることができたよね」

あえて雨に打たれた・・・そんな返事だった。

(No.110-2へ続く)

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