[No.98-1]小さな巨人
No.98-1
(こんなに、小さかったっけ?)
目の前の鳥居に、少し複雑な心境だ。
小さい頃、住んでいた街に立ち寄る機会があった。
そのついでに、ある場所へと足を伸ばした。
何の変哲もない普通の神社・・。
有名ではないけど、厳かな雰囲気は今も変わらない。
そこには、大きな鳥居があるはずだった。
(手を伸ばせば届きそうね・・・)
幼い頃、鳥居の上、目掛けて石を投げていた。
その石が上に乗っかれば、願い事がひとつ叶う・・・。
そんな言い伝えがあった。
鳥居は、空に通じるほど、高かった。
投げても投げても、乗っからない。
それどころか、その高さにさえ達しなかった。
結局、願い事をすることなく、この地を後にした。
私に立ちふさがる大きな存在・・・。
幼いながらも、何やら言い知れぬ存在を感じた。
場所の雰囲気がより一層それを感じさせる。
それなのに・・・。
大人になった私には、その鳥居は小さすぎた。
| 固定リンク | 0
「(004)小説No.76~100」カテゴリの記事
- [No.100-2]冬のホタル(前編)(2009.10.27)
- [No.100-1]冬のホタル(前編)(2009.10.25)
- [No.99-2]パラレルワールド(2009.10.24)
- [No.99-1]パラレルワールド(2009.10.23)
- [No.98-2]小さな巨人(2009.10.22)
コメント