« [No.95-2]マイノリティ | トップページ | [No.96-2]巡るギザ十 »

[No.96-1]巡るギザ十

No.96-1

「あれ?珍しいな」
「どうしたの?」
友人が私の言葉に反応する。

財布の中に、ふちがギザギザの十円玉が1枚入っていた。

「へぇー、“ギザ十”じゃない」

硬貨として、わずかだけど価値がある。
けど、それよりも別の所に大きな価値があると思う。

『お釣りの十円は、ギザ十にしてください』

こんなことを言わない限り、自然に入手することは難しい。
だからこそ、偶然手に入ったことに価値がある。
幸せが舞い込んだ・・・そんな気になる。

「良いこと、あるといいわね」

友人も同じ考えのようだ。
ある意味、財布の中に“茶柱が立った”のかもしれない。

「それじゃ、豪華ランチをおごってもらおっかなー」
「どうしてそうなるのよ?」
「ホールインワンのようなものよ」
(・・・一理ある)
「仕方ないわね・・・」
「やったー!」
友人がオーバーアクションで喜ぶ。

「じゃ、日替わりね」
「けちッ!」
「何、贅沢言ってんのよ!ギザ十ならそんな程度よ」

(No.96-2へ続く)

| |

« [No.95-2]マイノリティ | トップページ | [No.96-2]巡るギザ十 »

(004)小説No.76~100」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [No.96-1]巡るギザ十:

« [No.95-2]マイノリティ | トップページ | [No.96-2]巡るギザ十 »