[No.96-1]巡るギザ十
No.96-1
「あれ?珍しいな」
「どうしたの?」
友人が私の言葉に反応する。
財布の中に、ふちがギザギザの十円玉が1枚入っていた。
「へぇー、“ギザ十”じゃない」
硬貨として、わずかだけど価値がある。
けど、それよりも別の所に大きな価値があると思う。
『お釣りの十円は、ギザ十にしてください』
こんなことを言わない限り、自然に入手することは難しい。
だからこそ、偶然手に入ったことに価値がある。
幸せが舞い込んだ・・・そんな気になる。
「良いこと、あるといいわね」
友人も同じ考えのようだ。
ある意味、財布の中に“茶柱が立った”のかもしれない。
「それじゃ、豪華ランチをおごってもらおっかなー」
「どうしてそうなるのよ?」
「ホールインワンのようなものよ」
(・・・一理ある)
「仕方ないわね・・・」
「やったー!」
友人がオーバーアクションで喜ぶ。
「じゃ、日替わりね」
「けちッ!」
「何、贅沢言ってんのよ!ギザ十ならそんな程度よ」
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