[No.100-1]冬のホタル(前編)
No.100-1(文字の色:ホタル-黒、奈央-茶)
『ホタルちゃんは悪くないやん』
(ホタル・・・?)
話の流れからすると、僕のことらしい。
(・・・そう言えば・・・)
“ホタル”と呼ばれた疑問の前に、ある想いが浮かぶ。
僕は彼女をことを”奈央ちゃん”と呼ぶ。
でも、奈央ちゃんが僕のことを名前で呼ぶことはない。
それどころか、あだ名でもその他の何物でもない。
僕は彼女にとって“名無し”だった。
“ホタル”と呼ばれて、それがハッキリした。
今、思えば会話もメールも、僕を呼ぶ名は無かった。
(なんでホタルなの?)
聞くべきか、聞かざるべきか・・・。
連想されるイメージとしては“光”が一番だ。
それとも・・・。
(虫・・・っぽいから?)
それなら、ホタルじゃなくても他の虫でもいい。
(はかない命?)
・・・笑えない。
ただ、後にも先にもこれだけだった。
またいつものように名無しに戻った。
まるで、ホタルのように短い夏を駆け抜けた気分だ。
| 固定リンク | 0
「(004)小説No.76~100」カテゴリの記事
- [No.100-2]冬のホタル(前編)(2009.10.27)
- [No.100-1]冬のホタル(前編)(2009.10.25)
- [No.99-2]パラレルワールド(2009.10.24)
- [No.99-1]パラレルワールド(2009.10.23)
- [No.98-2]小さな巨人(2009.10.22)
コメント