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[No.89-2]遠い喫茶店

No.89-2

ひとりの女性と知り合いになった。
人目を避ける・・・逢う時はいつもそんな感じだった。
色々、事情がある上での行動だった。

「土日は基本、外出でけへんし」

そうなると当然、逢う場所も限られてきた。

「遠出ができたらいいよな」
「そやね!ブルーメの丘に行きたいんよぉ」
「ブルーメの丘・・・って?」

叶いそうにない話で盛り上がった。
何時に出掛けて、どこで食事をして、着いたら何をしようか・・・。

「ずっと先の話やね、ずっと先の・・・」

そう・・・それでも構わない。

遠出すればするほど、人目を気にしなくても済む。
けど、お互い仕事を抱え、平日を長時間共に過ごすのは難しい。

「まずは軽く、お茶からやね」

彼女の提案が実現されることはなかった。
僕達は、喫茶店にさえ、入ることができなかった。

月日は流れ、僕はひとりで喫茶店いる。

ふたりには遠かった喫茶店・・・いつか、一緒に。

(No.89完)

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