[No.88-1]虹のマーチ
No.88-1
「私に似合うカクテルある?」
ほろ酔い気分に任せた軽いジョークのつもりだった。
カウンターで交わされる女性客とバーテンダーの会話。
ドラマで見たことがあるその光景。
ちょっと憧れもあった。
「えぇ、ご用意できますよ」
その言葉にひとつの迷いも感じられない。
(でも・・・大丈夫なのかな?)
ここに来てから、一言もしゃべっていない。
私に関する情報は、見た目と雰囲気だけだ。
何を根拠にするんだろうか?
「心配ですか?」
逆に向こうから声を掛けられてしまった。
「そんなつもりじゃ・・・」
「いいんですよ」
やさしい表情のまま、作り始め、ほどなく完成した。
「どうぞ・・・」
差し出されたカクテルは、透明に近い。
カクテルが持つ色鮮やかなイメージと、かなりのギャップがある。
「このカクテルの名前は?」
まずは、これから聞くべきだろう。
「“虹のマーチ”でございます」
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