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[No.84-1]シグナルの向こうへ

No.84-1

「痛々しいわね・・・」

友人が腕に包帯を巻いている。
「自転車と接触しちゃった」と、軽いノリで連絡があった。
だから、そんな程度だと・・・。

「信号が青になったので渡ろうとしたらね・・・」
「自転車と“ドーン”ってこと?」

友人がウンウンと、うなずく。

「これからは、もっと注意するから」
「そうね。青だからって、油断は禁物よ」
自分自身にも言い聞かせる。

「ところで・・・なに?用事って」
元はと言えば、友人からランチに誘われた。
そんな時は、もれなく相談事が付いてくる。
それが包帯を見てから、少し話がそれてしまった。

「好きな人ができたんだ」
「へぇー、良かったじゃ・・・な・・・い・・・、ん?」

急に、あることが頭の中を駆け巡る。

(えっ!まさかと思うけど・・・)

「そう・・・その、まさかなんだ」
友人が私の表情を読み取って、先に喋った。

(No.84-2へ続く)

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