[No.82-2]あの日のメダル
No.82-2
その子は、周りを気にしながら、ある物を受け取った。
遠くからでも、それが優勝メダルだと分かる。
気付けば、試合に出なかった子がみんな集まっていた。
その子らも、次々にメダルを受け取っていた。
(な、なんで・・・なんでよ!)
子供なりに、激しい怒りが込み上げたことを覚えている。
でも、それはすぐに落胆に変わった。
(どうして・・・どうして、わたしだけ・・・・ないの?)
逃げるようにその場を去った。
本当は、逃げる必要なんかないのに。
(何だろう・・・すごく恥ずかしい)
その場から消えてしまいたい・・・ただその一心だった。
何かの理由で、私が外された。
その理由は・・・?ずっと考えていた。
「大人になったら、そんなことばかりだしね」
昔話に耳を傾けてくれた友人が、笑いながら言った。
社会に出ると、そんなことは日常だった。
何かの理由で選んだり、選ばれなかったり・・・。
それに・・・自分だって同じことをしてる。
選ぶのに、理由なんてない時だってある。
あの日、貰えなかったメダル・・・。
そうじゃない・・・生きる力を貰ったんだ。
(No.82完)
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