[No.81-1]風を感じて
No.81-1
「風って、何処から来るのかな?」
「そうだなぁ・・・ほら、そこに吹き出し口があるよ」
「バカ!」
(まぁ、無理もないか)
何の脈略もなく、しかも室内なら誰だってそう答える。
私としては、自然の風について聞いたつもりだった。
今、私は彼と美術館に居る。
目の前に、髪が乱れた女性が描かれた絵がある。
色調は明るく、表情は楽しげだ。
強い風に髪が乱れながらも、はしゃいでるように見える。
それとも、髪の乱れで何かを表現しているのか・・・。
「さっきはゴメン」
とにかく私の方が悪い・・・素直に謝った。
「いいよ。この絵を見てそう思ったんだろ?」
彼には分かっていたようだ。
大河の源流を探す・・・そんなテレビ番組を見た記憶がある。
極端に言えば、大河は一滴の雪解け水から始まる。
「風も同じなのかな?」
私の問いに、意外に彼の表情は真剣だ。
けど、風の始まりなんて、見たことも聞いたこともない。
「永遠の課題にしよっか?」
「いや・・・そうでもないぞ」
彼に、何やら考えがあるみたいだ。
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